煩悩
今日をどれほど待ち侘びていたか。
大好きな人の大好きな仲間たち。
わたしはここに来れて本当によかった!


「そんじゃ、沙羅ちゃんの歓迎会を兼ねて、今年1年クソお疲れ様ーー!!!」


さっきまで忙しそうに忘年会用のお料理を作ってたスーシェフがすぐ隣で乾杯の音頭をとる。
わたしも手に持ったグラスを1番に彼のものとぶつけ合った。
グラスの中のシャンパンがゆらゆら揺れる。


「サンジくんー!このお鍋すごい美味しい!出汁が最高!!」


「さすが沙羅ちゃん!その鍋出汁とるのに1番時間かけてんだ!沢山食ってくれよ。野郎共に持ってかれねぇように沙羅ちゃんの別に用意してあ「おいサンジ!お前こんな日まで見せつけてんじゃねーぞ!沙羅ちゃーん!こっちでお酌してくれよー!」


「あ、はーい!今行きます!」


自分の歓迎会も兼ねてもらってるからと
ゆっくり座っているわけには行かないみたい。
でもお酌に呼ばれて席を立つも隣のスーシェフはおもしろくないようで、あれよあれよと言う間に喧嘩が始まる。

おーやってんな!と囃し立てるスタッフと
程々にしとけよ、と呆れながらお酒を啜るオーナーと
端でゆっくりお酒を飲むみんな。
この全ての空気が新鮮で楽しすぎて、
この場の雰囲気だけですっかり酔っ払ってしまいそうだ。
「サンジくん!私は逃げたりしないから、怪我しちゃダメだよ?」
一言そう声を掛けるけどヒートアップした彼にはその声も届かないようで。

バラティエでの忘年会はスタッフの間で恒例になってるようだ。
大晦日の営業終了後にこうしてお酒とお料理で1年のお疲れ様会をするみたい。
私のお店では季節のイベントなんかなかったし
男女の関わりと姉さんたちのお世話が私の世界の全てだった。
「大晦日の忘年会でさ、沙羅ちゃんの歓迎会するって!」
だから、サンジくんからそう聞いたときはワクワクが止まらなかった。
美味しいお料理と楽しい仲間たち。これが今の私の世界。
サンジくんが連れ出してくれた、全てが最高の瞬間。



「はあ、沙羅ちゃん…オレのそばから離れないでね。」


私をお酌に誘ってくれたスタッフと一通りやり合ったサンジくんが再び私の隣にやってきた。
お酒を飲んで暴れたからか、
少し酔いが回ってしまったみたいに顔を赤くして。


「言われなくても離れないよ。でも私もお酌しに行かなきゃ。サンジくんもオーナーのところ行ったら?」


「何でオレがクソじじいに…!沙羅ちゃん、オレにお酌してよ。」


飲みすぎちゃダメだよ、と一言添えて空のグラスにシャンパンを注ぐ。


「ありがとう。乾杯。バラティエに来てくれてありがと。」


そうして二度目の乾杯をして私はシャンパンを飲み干した。
その瞬間にサンジくんが素早く慣れた手つきでおかわりを注いでくれる。


「今日は沢山飲んでね。オレが介抱するし」


「ふふ、ありがとう。初めてここにきた日のことを思い出すね。」


私がまだ娼婦をしていた頃。
サンジくんが同伴でここへ連れてきてくれて
営業終了後のお店でこっそりワインを飲ませてくれた。
あの時はまだ私の片思いで、初冬の寒さとサンジくんの優しさにすぐ酔っ払ってしまってたな。


「もう随分前のことみたいだなあ。あの日のこと覚えてるよ。オレ、沙羅ちゃんを他の男に絶対抱かせたくないと思ったの。」


「言ってくれたね。まぁ私そこそこ仕事は熱心だったし、結局サンジくん以外の人も知ってしまったけど。」


「あーもうクソ悔しい!!!!オレだけの沙羅ちゃんに出来ると思ってたのになー!」


「サンジくんだって姉さんと関係持ってたじゃない。それにお店の女の子ともしてたでしょ?」


「えっ、それなんで」


「やっぱり!!お店に来る女の子に対する手つきとか話し方とか、妙に怪しいなと思ってたのよ!どの子かも大体わかるわよ!?」


「げっ!まじか…で、でも、オレみんなにちゃんと、彼女出来たって報告してるし…」


「そうなの?なんか意外だね。」


「意外って…オレ、今は本当に沙羅ちゃんしか要らないんだよ?」


船の揺れが三半規管を直撃するくらい感覚が研ぎ澄まされる。
少し話しすぎたみたいだ。
彼が私を見つめる瞳は熱くて、
お酒が入ってるからか少し赤く潤んでいて、
彼の言葉に真剣味が増していく。

そのまま吸い込まれてしまうんじゃないかと思った。
唇が触れ合う。そしてその直後はっとして辺りを見渡した。


「ちょっと…!みんながいるところで、見られちゃうよ…」


「大丈夫、みんなオレの料理に夢中だから。」


確かにスタッフはみんな鍋を囲んでる。
意外と経過している時間に宴もたけなわで、
鍋の〆を麺にしようか米にしようかなんて会話が聞こえてくる。


「もう、馬鹿…」


「沙羅ちゃんは、もう少し飲まねぇとな!オレ〆の準備して来るよ。襲われないでね。」


そう言ってスーシェフは、私の髪にキスを残して厨房へ去っていった。














「はあ、お腹いっぱい…」


サンジくんの特性出汁で〆た雑炊は最高だった。
カウントダウン用のシャンパンはカウントダウン前にみんなで飲み干してしまい、代わりに鍋で温めた徳利で熱燗を飲んだ。
元々お酒に弱い私はいま最高に酔っ払ってると思う。


「サンジくんーー!!ごちそうさま、最高よ…」


「そりゃよかった!沙羅ちゃん顔赤いけど大丈夫?」


「んーーまだ飲めるよ!!サンジくんだって酔っ払ってるでしょ?」


「そりゃあね。オレ、米の準備してる間もちょっと飲んでたし…沙羅ちゃんがまだ飲むなら付き合うよ。」


そう甘い声で言って、人目も気にせずに腰を抱きにくる。
その瞬間に私の中の奥の方、女の部分が疼いた。



「ねぇ、サンジくん」


「ん?」


「やっぱり酔っ払っちゃった…部屋に行こう…?」


全体重を彼に預けもたれかかって誘う。
ああ、彼の肌の温度がすごく心地いい。
大丈夫?と聞きながら頬に当てられた手は冷たくて最高だ。


「まだ年明けてないよ?カウンドダウンしないの?」


「うん。あのねサンジくん。私も、サンジくん以外何も要らないって、気づいちゃったの。」


「我儘なお姫様だ…行こうか。」



私はサンジくんに抱きかかえられて、
2人でこっそり部屋に戻った。
みんな酔っ払ってるし、テンションも高いし
2人がいなくなったことには誰も気づかないだろう。

暗い廊下を運ばれながら寒いと言って首にくっつく。
この間にも下着がどんどん湿っていく感触を覚える。
サンジくんの肌もどことなく熱い。首筋にキスをすると僅かに鬱血痕が残って「こら。だめだよ」と低い声で叱られる。
ふさがった両手はそのままに扉を脚で蹴り開けた。
ベッドに2人で倒れ込んでそのまま夢中でキスをした。



「あっ、ああん、うあ、サンジくん…」


「ん、どしたの沙羅ちゃん、まだキスしかしてないよ?」


半身を持ち上げて私を見つめるサンジくん。
早くあなたが欲しくてたまらないの。
再開したキスを続けながら下半身を探る。
ベルトを外して前を寛げ、下着の中から熱を取り出す。


「サンジくん…まだキスしかしてないのに、こんなになってる…」


同じ会話を繰り返しながら
硬さを持ったそれの頭をゆっくりと撫でる。


「は、ん…沙羅ちゃんのこと部屋に運んでる時から、やばかったから、オレ」


「私が欲しかった?」


「うん。欲しいよ。」


「あたしも、サンジくんが欲しい…」


手で軽く刺激したソレを口に含んで愛撫すると
頭の上からサンジくんの吐息が降ってくる。


「気持ちい?」


「やばい。お口の中すごい熱いよ」


「サンジくんのも、熱い…」


「沙羅ちゃん、横になってよ、オレもしてあげる」


「ん、やだ。あたしがする。あたしが、サンジくんを、ほしいの。」


「ちょっと、やべぇって。沙羅ちゃん、酔ってるだろ…!」


髪を撫でられ彼を見上げれば
快感に顔を歪めながら耐えるサンジくんの表情。可愛い。

口をすぼめて吸い込みながら顎を揺すった。



「沙羅ちゃ、それやばい…!も、だめだって、離して、」


「イっていーよ?」


「…っ!!」


「サンジく…きゃっ!!」


いきなり腰を掴まれてベッドの上にひっくり返される。
覆い被さられ腰に擦り付けられる熱と、止まらないキス。


「っああ、サンジくん…」


「イくなら、ここで…」


「っああん!」


いきなり下着の中を探り中に入ってくる指に嬌声が上がる。


「っすげえ、オレまだ何もしてないよ?何でこんな…」


「やだあ、言わないで…」


「興奮したの?」


「っ、うん…」


「やべ、クソ可愛い……ごめん、濡れてるし、もういれていい…?」


「早く…早く挿れて…」



彼は手早くシャツを脱いで
半端に脱いでたズボンと下着を外し
スカートの中から私の下着だけを抜いて指で入口を探った後、覆い被さりゆっくりと腰を進めてきた。
中が彼のものに合わせて広がっていく。


「っ、ああ、はあ、サンジくんん…」


「っ、沙羅ちゃ…熱い…」


そう呟いたと思うといきなり中が突かれる。気持ちいい


「あっ、ああ、は、」


「んっ、んん、沙羅ちゃん好きだよ…」


腰は動かしたまま
シャツに忍び込んできた手が胸を揉む。
手早くブラのホックが外されシャツも脱がされ
揺すられながらあっという間に裸にされた。


「はあ、気持ちい…」


「あたしも…サンジくん、気持ちいよお…」


サンジくんが腰を動かしたまま、
秘部の突起を探りにくる。
これをされると私はもうだめだ。


「や、だめっ!それ、いっちゃう…!」

「ん、いって…」


「あ、ああ、やああ、ーー!!」


「っは、おれもだめ、いく…っは、出すよ…」





わたしの体にもたれかかったサンジくんがゆっくりと体を持ち上げた。



「はあ、ごめん、オレ、興奮してすげぇ早かった…」


「サンジくん…、前、いじるのは反則だよ…わたしすぐイっちゃうんだから…」


お互い肩で息をしながらゆっくり見つめ合う。
会話を交わしながらサンジくんが仕上げみたいなキスをおでこにくれる。熱くてくすぐったい。


「だってオレ、イきそうだったんだもん。沙羅ちゃん置いてイくのはさすがに男としてダメだろ?」


「もう、ばか…」


「もっかいしよ。」


甘えるみたいにすり寄ってくるサンジくんと甘いキスを交わしながら横目で少し部屋の時計をみる。
短針と長針がちょうどぴったり私たちみたいに重なって、真上を向こうとしていた。


「あ、サンジく、



言葉を紡ごうとしたところで、
フロアから大きな盛り上がりの声が聞こえてくる。
ちょうど今この瞬間、新しい年が明けたみたいだ。


「明けちゃった。」


「明けちゃったね。」


「明けましておめでとう。」


「今年もよろしく」


「えっと」


「それじゃあ、姫初めしよっか?」


「え、ちょ、まって、ばかっ!!」



次の瞬間にはもう、再び言葉が紡げなくなってた。
今年も慌ただしくて楽しい1年になりそうだ。
サンジくんも私も相変わらず煩悩に塗れていそうな幸せな1年になるだろうな。

次の日仕事に出た2人が消えた夜のことをみんなに詰められたのはまた別のお話…


 
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