離さないでね
冷たい風が吹いてきて、肩から被った毛布を握り直した。少しだけ歯が震える。けど歯の噛み合う音を聞いてたら風の冷たさが余計に増す気がして、震えが頭のてっぺんまで達したところでやり過ごした。
木製の見張り台が私の震えと連動してキシリと鳴る。
海の真ん中から見上げる空は澄んでて星がすごく綺麗だけど、冬の海は寒くて好きになれない。
感じる風の冷たさも、震える歯も木のなる音も冬特有の物だと思うと全部嫌いだ。
もう一度毛布を掴む。
そんなわけで、この季節の不寝番はたまったもんじゃない。
毛皮のコートを頭から被って、部屋から持ってきた毛布に包まり交替の時間を待った。
海に目を見やる。真っ暗だ。吸い込まれそうで怖い。
こんな寒い真冬の真っ暗な海じゃ、今夜も敵襲はなさそうだ。
敵襲よりもオバケが怖くなってしまいそう。
ふと下からロープの音がした。
オバケのことなんか考えたすぐ後だったから少しびくっとしてしまったけれど、音の主はすぐにわかった。
私を気遣って暖かいコーヒーを淹れてくれた、サンジくんだ。
「はは、沙羅ちゃん雪だるまみてェだな。」
寒さに丸まる私の姿を見るなり彼はそう言って、コーヒーを差し出した。
ありがと、とだけ答えて受け取ると白い湯気に心がほっと安らぐ。
まるで2人約束していたみたいにサンジくんは私の隣に座る。
ほんと寒ィな。不寝番ありがと。なんて優しい言葉と一緒に。
「起きちゃったの?」
「そうだね。沙羅ちゃんが震えてる気がして」
馬鹿じゃないのって声に出して笑うと
自然に顔を近づけて来る彼の口づけを受けた。
付き合ってるわけじゃない。サンジくんは女の子みんなのことが大切なんだと思う。
キスをするのも、体を重ねるのも、全ての女の子に平等にする行為だと思ってる。
なのにそれを拒めないのは、貴方のキスを受け止めてしまうのは、何でなんだろう。
「馬鹿って、酷いね」
「…寒いからもっとこっち来て?」
「…何それ。誘ってるの?」
サンジくんはそう言いながら
薄い唇を綺麗な三日月みたいに象ってみせた。
色っぽいなと思ってみてるとそこに吸い込まれそうになる。私がさっき見た真っ暗な海と同じで。
けれど直前になって理性が勝って、綺麗な顔を押し退けた。
「えー。せっかく沙羅ちゃんがキスしてくれると思ったのに」
想像通り、残念そうな声を出して落ち込む姿。
その姿にわたしも思わず笑みが漏れて誤魔化すようにコーヒーを口にした。美味しい。
「だって、誘ってないんだもん。サンジくんの勘違いよ」
「それは失礼しました…暖をとるのを手伝うから、許して?」
望み通り、同じ一枚の毛布にくるまって体を寄せ合った。
少し恥ずかしくなってもう一度コーヒーをすする。
風はずっと冷たくて、海も真っ暗なままだ。
あぁ、好きだ。
って、ふとそう思う。今日が初めてじゃない。
誰にだって同じようにしてるキスやセックスも
拒めないのは彼のことを好きだからだって
とっくの昔からわかってる。
「ねぇサンジくん」
「ん?」
「ここで今、したいって言ったらどうする?」
私のその一言で、彼は目を大きく見開いたけど
すぐに全て察したような表情で腰を抱きに来る。
唇はそのすぐ後に触れた。
絡む舌はこんなに寒いのに何故かすごく熱くて
私はどんどんそこに夢中になる以外の道は残されていない。
「今度こそ、誘ってるんだよね?」
彼の目は真剣だけど、私は少し不安になった。
「サンジくん、本気なの?ここ、見張り台、っ…!」
「沙羅ちゃんの誘いをオレが断れると思う?」
甘い言葉を吐いて首筋に舌を這わす彼。
そんなこと言って本当に馬鹿みたい。
女の子なら誰からの誘いでも、そんな風に応えるくせに。
木製の見張り台は私が寒さに震えて軋むくらいだ。
キスはおろかセックスなんか絶対アウトな気がする。
「サンジくん、うそ。誘ったなんて、そんなことあるわけない。私はただ質問しただけなんだよ」
「質問?試したんだろ。ここでオレを誘ったらどうなるかって。教えてあげる」
あぁ、何もかもお見通しなのね。
肌蹴たシャツから覗く素肌が冷たい風に晒される。
そこが彼からのキスで熱くなっていくのがよくわかるから、冬なんか大嫌いなのよ。
服の隙間から素肌を大きな手が這う。
私の体が冷えないようにとせめてもの配慮を感じる。
その手は熱い舌を絡めたままで双丘を掴んで揉んだ。
サンジくんの手はすごく冷たくて、
けれど私の体はどんどん熱くなっていく。
「硬くなってる」
指先が突起を掠める。もっと刺激を求めて彼に擦り寄った。
そして体温を分け合う。サンジくんも熱い。
「ああ、ぅあっ…」
冬空に響く自分の声に耐えられなくて、
更には部屋で眠る皆にまで聞こえてしまいそうで
こっそり静かに喘ぐのもまた興奮するもので。
「可愛い。静かにしてて偉いね。」
そう言ってサンジくんは向かい合わせの私のスカートの中に手を忍ばせてストッキングと下着だけを抜き去ってしまう。
寒かったら言ってね、と
私の前から覆い被さって2人で毛布を頭から被ったまま秘部への愛撫を始められた。
寒空の下に水音が響いた。腰が動く。
「すげぇ。何でこんな濡れてんの?」
「っ、」
「何で?教えてよ。もしかしてオレが上に来てからずっと?」
「っやあ!」
スカートの中でサンジくんの指が弄るように動いて
私を煽るような言葉と挑発的な目で犯しにくる。
わかっているくせに。私が貴方にどんな気持ちを抱いているか。
好きで、好きで、いつだって抱いてほしい。
貴方のフェミニストな性格につけ込んで
ただ欲しいものをいつももらっているだけなの。
「もう、挿れてっ……」
「沙羅ちゃん、辛抱たまんねぇな。慣らさねぇと痛いよ?」
「いいの、ちょうだい…」
足を開いて向かい合ったサンジくんの前を広げる。
下着をずらしてペニスを取り出せばその熱に私の腰は震えた。
本当にいいの?って私の体を心配しながら
またキスを繰り返す。早く、と急かすと
腕の力だけで抱き上げられて太ももの上に座らされた。
「自分で挿れてみて。」
一度太ももを跨いだまま膝立ちになって
サンジくんの肩に捕まりながら腰を落とす。
サンジくんはそんな私をトロンとした目で見つめて快感を待っている。
「っあ、ああっ…はあ、はいってる…」
割れ目が裂けていくのを感じながら
彼の熱を全部受け止めた。
軽く上下に動きながらサンジくんを見つめる。
息を吐きながら目を閉じて、何考えてるんだろう。
「サンジくん、キス」
「っ、よろこんで……」
そのまま焦ったくなったのかサンジくんが
腰を上下に揺らして私の奥を突く。
良いところに当たって高い声が出る。
「っだめっ、サンジくん…!そこ、っん…ああんっ…」
「イきそ?」
「っうん」
「っやば、早すぎ」
腰を揺らすのをやめて膣からペニスがずるりと抜かれる。
どちらのものかわからない体液でテラテラと光るそこは
夜の暗い海の上で見ると得体の知れない生物のようだ。
腰を掴まれて立たされる。
そのまま見張り台の縁に手をついて、今度は後ろから挿入された。
「サンジくん、これっ、」
「ん、…興奮しねぇ?」
オープンな状況にも関わらず大きな声が漏れるのは
もしかしたらこの関係を他のみんなにも知ってもらいたいからなのかもしれない。
そんな私は彼の言葉に酷く興奮した。
見られたい。彼とのセックスを誰かに。
「っああん、サンジくん、サンジくんっ…」
「はあ、ぅん、気持ちい…」
吐息を耳元で感じながら中で暴れる塊の熱を感じる。
ああもっと、もっと沢山愛して欲しい。
私たちの関係を承認してくれる誰かが来ないかと見張り台から周りを見渡す。
甲板に人気はない。敵襲に見える灯なんかもない。
風はただ冷えてる。海はずっと暗くて吸い込まれそうなままだ。
ああ、好きだ。
こんな寒くて暗い海の中、
頼りに出来るのが貴方からの熱だけだなんて。
「サンジくん。」
「っん?」
「離さないでね。」
「え?」
「私のこと、っ、ずっと、捕まえておいて?」
冬の海は暗くて怖いから、私がそこに吸い込まれないように、貴方の熱で繋ぎ止めておいてほしい。
「いいよ。沙羅ちゃんも、ずっとオレの側にいてくれるよな?オレだけの側に……っ!」
良いところを突かれて突然中がきゅうっと締まる。
サンジくんの甘い吐息と一緒に吐き出された飛沫をお腹の中で受け止める。
荒く息を吐きながら肩越しに見つめ合って
ちゅっちゅ、と小鳥みたいなキスを3回。
それが済むと熱が私の中から引き抜かれる。
それに感じて少し腰を震わしてから向き直ってもう一度キスをする。
「好きだよ」
私の肩に顎を乗せてへたり込んだ貴方の甘い台詞を受け流して海を見た。
まだ夜は明けそうにない。真っ暗な海。
黒は、サンジくんの色だね。私の全てを塗り潰してしまう。
冬の海って嫌いよ。溺れてしまいそうになる。
でも夢中なの。嘘でもいいから、いつまでも私を虜にしていてね?