君のことが好きだよ

7限目が終わり疲れた身体に鞭を打つようにして急いで帰る準備を整える。明日は休日だが早く家に帰ってなるべくたくさん休みたいんだ!と心の中で思っていると近くにいた出久くんが「あっ、みょうじさん!」と呼んできたのでそちらを振り向くと飯田くんと話していたらしい。

「明日クラスの何人かでショッピングモールに行く予定なんだけど、みょうじさんもどうかなって」
「え、私もいいの?」
「もちろん!」
「うーん、でも課題終わらせたいからまた今度にしようかな?」
「そっか、課題大変だよね。今度は行こう!」

じゃあ月曜日!といつものように優しく笑う出久くんはそのまま数名のクラスメイトと一緒に教室を出ていった。そんな背中を見送って周りに誰もいないのを確認してから少しだけため息をつく。別に、課題にそんなに追われているわけではないんだけどな。折角の休み時間を減らすのが嫌になって嘘をついて断った自分が少し嫌になる。優しさを無下にしてごめんね、出久くん。悟られないようにそっと心の中で謝っておいた。



校舎を出てカバンを手にスタスタと歩いて行く。耳にはちょっと安めのイヤホンをつけて端末機器から音楽を流す。次の曲は飛ばすか、とタップするとふと懐かしい曲が流れ出したのでそのまま耳を傾ける。このバンド、前は特に好きで聴いていたなあ。確か歌詞は、

「おい」
「ひっ!?」

歌詞を思い出そうとしたその時に急に後ろから肩をとんっと叩かれて大袈裟に反応してしまった。いや、ごめんなさい。でもびっくりしました!と後ろを振り返るとそこにいたのはいつもそんなに話をしない爆豪くんだった。なんで私に声をかけたんだろう?と思い「どうしたの?」と問いかけると「…別に」と言ってそのまま横に並んで歩き出したではないか。私、なにかしたかな、と思いつつも電車に乗ろうとすると爆豪くんも乗ってきて隣に腰掛けた。

「爆豪くん、こっちだっけ?」
「ンなのどうでもいいだろ」
「そうだけど…」
「……さっき、なんの曲聴いてたんだよ」
「えっ?」
「チッ」

急に聞かれたのでえっ?と返すと舌打ちされてしまった。怖すぎか…。取り敢えず聞かれたことには答えないと、と曲名を告げると知っていた曲らしい。「あー」と返事を返してくれた。それからそのままそのバンドについてや課題について話しているとふいに爆豪くんが「おい」と呼んだので話を中断させる。爆豪くんは頭を掻きながら話にくそうにしながらも口を開いた。

「明日、図書館に10時」
「えっ、あ、10時に図書館に行けばいいの?」
「ん!」
「あ、もしかして課題?」
「分かってんなら口に出すんじゃねぇよ!」

思わず謝ろうと顔を見ると爆豪くんの頬と耳が赤くなっているではないか。その姿を見て思わず自分も照れてしまい、お互い無言になってしまう。そのあと数分して口を先に開いたのは爆豪くんだった。「連絡先教えろ」と言ったので端末機器を取り出してからバーコードを表示させるとすぐに友達追加される。

「明日遅れてくんじゃねぇぞ」

少しだけいつもよりも柔らかい雰囲氣の爆豪くんはそのまま次の駅を降りてしまった。端末機器を見て追加された彼の名前を見ていると曲が一通り終わったのか先程の曲に戻っていた。ああ、そうだ。確か歌詞は、と思い出す。

「きみのことがすきだよ」

口ずさんだ瞬間、先程まで隣に座っていた爆豪くんのあの顔を思い出したのはきっと偶然ではないはずだ。なんて思いながら手帳に明日の予定を忘れないように書き込んでおいた。少しだけ明日が早くくればいいのに、なんて思いながらまた曲へ耳を傾けた。



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