夜明けまで私の王子さま





「ただいま」
「お帰り、聖臣」

お互い仕事がある為なかなか生活リズムが合わない上に、片方はスポーツ選手で多忙を極めているときて、じゃあ一緒に住めばいいのでは?と効率重視で同棲を始めたのが数ヶ月前のこと。彼が何か決定的な言葉をくれた訳ではなく、話し合って流れでそうなったように思う。

ここ最近は私が夕飯を食べ終わった頃に帰ってきて、早々にシャワーを済ませた後で彼は用意された夕飯に手をつける。最後に落ち着いて一緒に食卓を囲んだのはいつだったろうか。買い物から食事の用意、洗濯、その他細々した家事も、私ばかりがやっている気がする(掃除は聖臣が気になったら自分でするので手は出さない)。もっと言えば、下世話な話だけれど、セックスも1か月くらいしていないのではないか。そもそも世のカップルはどのくらいの頻度でするものなんだろう、と黙々とご飯を食べる聖臣を見ながらぼうっと考える。もしかして私の女としての魅力が足りないのか。心配である。

「.......なに」

流石に不躾な視線が気になったらしく、怪訝な顔をする聖臣。味付け大丈夫だったかなって気になって、と適当なことを言うと「大丈夫」とだけ答えて彼はまた箸を進めた。美味しいよ、ぐらいまで言えたら及第点だけれど、もう長い付き合いなので言葉を求めることは辞めている。それに、色々言いたいことはあるがある程度一緒に住む前から予想していた通りであるし、結局口下手なところも含めて好きだなあと思ってしまう私も、大概にどうしようもない。

一方的に文句を垂れて喧嘩をするつもりもないので、近々私も気分転換に出掛けて自分に時間とお金を掛けてもいいかなあ、なんてことを考えるのだった。そしてその日は意外と直ぐにやってきて、

『っ、今、どこ』
「え?急にどうし、」
『いいから位置情報、送って』

有無を言わせぬ雰囲気に圧倒されて、言われるがままにメッセージアプリて位置情報を送る。すると直ぐに彼がそれを読んだことを知らされるが、一向に返事はない。そこを動くな、ということか。

「待ってろって、こと...?」

幸い公園の近くに居たので座るところもあり、自販で買った飲み物を飲みながら気長に待つことにする。聖臣が焦った様子を見せることは珍しかった。

「っは、疲れた...」
「どうしたの聖臣。わざわざ迎えに来るなんて、」
「いや、急に居なくなる方が悪いでしょ。」





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