Cold Brew - 3





「遠征の時、またここ来れば会えるよな?」
「あ......実は、私が店番してるのは、期間限定なの」
「え?」
「うん。ここは叔父さんの店なんだけど、今旅行に行っててね。偶々転職のタイミングで暇してたから、私が臨時で店番してたんだ。短い間だったけど楽しかったな...」

私がもうすぐこの店を去ることを受けて、一瞬だけ考え込むようなそぶりをした木兎くんが、顔を上げて「明日、夜また寄っていい?」と伺いを立てる。

「うん、勿論。けど、明日大阪に帰るんだよね?」
「うん。まあでも、新幹線は何時のでもヘーキだから。終電さえ乗れれば」
「そっか。...じゃあまた、コーヒー用意して待ってるね」

そう言うと、心から嬉しそうに木兎くんが笑う。閉店間際のコーヒーショップでふたりで過ごす時間は、私が思うよりずっとずっと、心の中に大切にしておきたいものになっていた。





BACK - TOP