指輪はない、そしてその後





※アドラーズ友情出演



「牛島サン、手作りのメシ食ってるの珍しいっスね」

控え室で軽食を食べていると影山に声を掛けられる。自分で作って持ってくることも偶にあったが、圧倒的に出来合いのものを食べることが多かったので、言われてみればそうかもしれなかった。

「ああ。最近は練習や試合の日は頼んで作ってもらっている」
「...?彼女サンっスか?」
「というか、嫁だな」
「......?ヨメ...?」
「嫁だ」
「エッ」

影山は目を見開いて固まっているが、俺は何か変なことを言ったのだろうか。

「え、牛島さん結婚したんスか」
「ああ。言っていなかったか」
「初耳っス...え、星海サン知ってました?」

少し離れたところでどうやら話を聞いていた星海も、顔を引き攣らせている。

「知らねえよ...牛島さん、そういうのは報告するもんですよ!」
「そうなのか」
「そうでしょ普通!!大体、」

星海が何やらやいやい言っているが、これは羨ましがっているのだろうか。まあ今伝えたし良いか、とおにぎりの残りを口に放り込む。うまいな。やはり名前の飯はうまい。おにぎりでも何でも。夕飯は久しぶりにハヤシライスを食べたいかもしれない。連絡を入れておこう。連絡不精はトラブルのもとだ。

「......」
「......何だ」

スマホを触っていると影山の目線を感じる。

「牛島サンもそんな顔するんスね」
「......どういう顔だ」
「聞かれると難しいッス。けど、なんていうか、笑ってました」

表情が人よりも少ない自覚はあるが、名前に連絡を入れながら、俺は無意識に笑っていたらしい。

何だか自分が少しずつ変わってきたのが分かる。それも何だか悪くなかった。

「そろそろ時間っスね。行きましょう」
「ああ」

今日も俺は運良く、バレーをやる。





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