おそ松の誕生日を祝う
出掛けに居間の弟達へ投げた「ちょっくらパチンコ行ってくるわ」という台詞は、今日に限っては単なる方便でしかなかった。別にやましい事は無いし、だから別に嘘を吐く必要も無いんだけど。足取り軽やかに向かう先は通い慣れたパチンコ店でも、はたまた競馬場でも、昼から開いてる駅前の安い居酒屋でもない。
「はーい、愛しのダーリンが来てあげましたよ〜。っつーか良い匂いさせてんなあ、俺、感動しちゃって泣きそう」
わざわざインターフォンを鳴らさずとも、合鍵という素敵なアイテムで勝手に入る事の出来るアパートの一部屋。そして、それを許されているのは他の誰でもない、俺だけだ。改めてしみじみ思えば心に沁み入るもんが有って、奇跡みたいな話で、本当に感動する。ふわり、と玄関に程近いキッチンの方から漂ってくる、香ばしくも甘ったるい匂いさえ、今、俺だけのものなのだ。こんなに素晴らしい奇跡がこの世に在って良いんだろうかって思わない事も無いけど、在るんだから良いんだろう。
「あーあ、驚かせようと思ったのに。何で今日に限って、こんなに早く来ちゃうのかなあ、おそ松ったら」
「そりゃ、今日だからだろ」
「そうよね、……お誕生日おめでとう、おそ松。あなたが生まれて来てくれて、良かった」
なんて、照れ笑いを浮かべる彼女と会えた事を、普段は信じてもいない神様とやらに感謝してしまっている自分に一番、驚いている。本当はこっちが言いたいくらいなんだ、「君が同じ時代に生まれて来てくれて、良かった」って。勿論、そんな恥ずかしい事は今更、口に出して言える訳も無いけど。もう少し大人になったら言えるかな――とか何とか、歳を一つ取っても変われない俺が、言える日は果たして何時になるのやら。願わくはその時まで、否、それ以上に末永く俺と彼女の、唯一無二のこの関係が続きますように。
(六つ子達、お誕生日おめでとう!)
2016/05/24 23:01
ALICE+