文次郎と愛を囁き合う

※現パロ

「今夜は、月が綺麗ですね」

「……ここは、死んでも良いわ、と返すべきか?」

「そういうつもりなら、立場が逆でしょう」とむしろ満足気に微笑んだ彼女の艶やかな下ろし髪が、月光に淡く照らされ煌いた。"愛している"の返事もすんなりと出来ない性格の自分だから、ここで罷り間違っても綺麗だなどという睦言は口にしないが。それでも眼前の彼女には、たとえ言葉にせずとも想うだけで分かってしまうのだろう―――――嬉しそうに口角を綻ばせている所からして、明らかだ。
ただ、想いを遠回しに告げる様な彼女のそんな性分を把握している自分が、会話以外の気配に因ってそれを可能にしているのもまた同じ。如何にも安直な台詞は互いに必要としていない――そんな事実が、不思議な事に互いの想いをより強く認識させるのだ。

「月もそうだが、星もよく見える。どうやら、明日は晴れそうだ」

肯定の言葉も短く、こくりと首を縦に振って頷いた彼女の小さな掌をそっと握り締める。具体的な形で吐露する事は難しくとも、触れ合った指先から伝えた摂氏三十六度の"愛している"を、きっと彼女は受け取ってくれた事だろう。

2016/05/03 00:13


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