RTNのサスケと悲恋

※報われない話なので、追記に引っ込めます。
尚、RTNの限定月読設定につき、本編をご覧になった上で許せる方向けです。

「昨日は悪かったな、仔猫ちゃん。この埋め合わせは、またいずれ必ずするからさ」

「……、別に、そんな必要無いわ。だって、私は、……」

少女は俯いていた顔を上げ、何の感情も込められていないかの様に静かな眼差しを少年へ向ける。ただ、よくよく見れば緩やかに細められた眦には、痛々しい朱が浮かんでいた。少年が手に持つ紅い薔薇をするりと抜き取って、それに僅か視線を落とした少女は何を思ったか、―――――ぐしゃり、と花弁を握り潰し、茎を手折ってみせた。

「棘の無い薔薇なんて、偽物でしかない。……あなたの心と一緒でね」

少年は言葉も無く、はらはらと地に堕ちてゆく深紅の欠片を目で追う事しか出来なかった。己の移り気な性分や、約束を違えた行為を責められた事は過去に何度か経験したが、標的と定めた獲物に拒絶された事は一度も無かった。振り返れば、この少女だけが今まで自分の不埒さに、文句らしい文句の一つも言って来なかった様に思うが、とうとう溜まったツケが廻って来たとでも言うのだろうか。

「だから、もう要らない。花も、あなたも、欲しいとは思わない」

ただ、決意を秘めた様子の少女の声だけが奇妙にはっきりと聞こえて、雑踏が遠く離れてゆく。少女は最早、少年への絶対的な否定しか口にしない。「……私は、」――薔薇の花弁全てが散ってしまう様を見送ってから、少女は掌に取り残された萎びた茎を投げ捨てる。

「私は、仔猫ちゃんなんかじゃない。……さよなら」

ぽたりと、乾いた地面を零れ落ちた透明な雫が濡らしたのは、ほんの一瞬。少女に告げられた別れが"また、明日"の様に温かなものでない事だけは、動揺する思考にも理解が追い付いた。無意識に引き止めようとしたらしい、虚しく空中を泳ぐ右手を、少年は何時までも茫然と眺めていた。

2016/05/03 00:20


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