肉体美を讃えられるライナー

「おお、すごい、すごい」

「……、なあ、これ、今日何回目だと思う?」

ベタベタと胸板から腹回りにかけて、無遠慮に撫で回して来る女は問いかけを聞いているのかいないのか。最初こそ異性に触れられるという事で羞恥したものの、今ではもうすっかり慣れてしまっていた。
同期のサシャ・ブラウスが食べ物に目が無い様に、どうやら彼女は筋肉に魅せられる性質らしい。そして自分で言うのも気恥ずかしいが、この俺、ライナー・ブラウンが彼女のお眼鏡に最も適ったのだそうだ。ちなみに女子の中では、ミカサ・アッカーマンの肉体美が他の追随を全く赦さず圧倒的だと言う。だからと言って、嬉しいかと問われれば正直、微妙な所だ。

「んー?さあ、それは分かんない!いちいち数えてないし」

「別に、減るものじゃないから良いでしょう」と小首を傾げる彼女には心底悪気が無いのだろう。だが、訓練に支障が出ない範囲の事とはいえ、さすがにこうして一日に何度もへばり付かれては、溜息を吐きたくなるのも致し方無いと思う。

「うーん、本当に惚れ惚れするバランスの良さ。特に、この大胸筋が……」

「お前、もういっそ筋肉と結婚しちまえよ……」

せめてもの嫌味を投げかけると、彼女はようやく俺の一部を見詰めるのではなく向き合って、ぱちぱちと目を瞬かせた。それから何故か、これでもかと言う程、満面に喜色を浮かべて、また愛おしげに俺の腹筋を撫でて言うのだ。

「ライナー、私と結婚してくれるの?」

開いた口が塞がらないとはまさしくこの事で、どうやったらそんな発想に行き着くのだという突っ込みはただ脳内で駆け巡る。「私、結婚するならライナーが良いなって思ってたの!」なんて極上の笑みを湛える彼女が思い切り抱き着いて来て、自分のより遥かに柔らかい胸が押し当てられたものだから、俺はもう何も考えられなくなってしまうのだった。

2016/05/03 00:25


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