兵助にとっては最上級の告白

「お前の事、好きなんだ。豆腐と同じくらいに」

「……、は?」

目の前の少年は大層真面目な顔をして、口説き文句にしては冗談としか思えない言葉を吐いた。異性に対する慕情を、食物に対するそれと比べる奴が在るか。脱力してしまう私を他所に、本人の顔付きはやはり至って真剣だ。
しかし、この少年ならば仕方の無い事かもしれないと思ってしまう辺り、私も相当の変人なのだろうか。否、私は何もおかしくはない。彼の豆腐にかける情熱は、それ程に常軌を逸している。

私と仕事とどっちが大切なのか、などといういじらしくも不毛な質問をしてしまう様な女に成り下がるのは不本意だ。ましてや、対象が食物などとあっては余計にである。傍から見ればとんだ笑い話だが、当事者となれば笑えない。どんなに冗談の様に思えても、彼にとっては確実に最上級の告白なのだ。とりあえずは、それで良しとしよう。

2016/05/02 23:18


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