女の涙に弱い劉鳳

一度は、何も要らないと思った。自分の信念を貫き通す為ならば、命さえ要らないと。だが、俺は俺が要らなくても、彼女は違うのだろう。だから現に、ぼろぼろと両の目から雫を零す事を止められないでいるのだと思う。

「泣くな」

やはり自分は、どうしようもなく不器用な男だ。自分の為に、自分の所為で泣いている女を眼前にして、気の利いた言葉一つ思い浮かばない。絞り出した声は酷く狼狽しており、情けない事この上無い。胸にしがみ付き嗚咽を零している女の背に、そろそろと手を回す。震える肩は細く、頼りなかった。

「何処にも行かないで」という涙混じりの懇願が鉛の様に重く圧し掛かり、あんなにも強固だった信念をも縛ってしまう。動けない――文字通り、俺は導を見失いそうになる。どうしたら良いのだろう。ただ、この哀れな女を二度と泣かせたくはないと、そんな事を漠然と思った。

2016/05/02 23:20


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