スレナルに追い詰められる
「カカシ先生、匿ってくださいっ!」
突然、どたばたと窓から転がり込んできた珍客に、カカシは目の前の書類に向けていた顔を上げた。彼女が此処へこうやって侵入するのも何度目になるだろうか、既に火影直属の護衛部隊にも暗黙の了解となっている。というのも、彼女を追っている人物に因る所が大きいのだが。先日、六代目火影に就任したばかりで多忙を極めるカカシは、増えた厄介事に盛大な溜息を零した。
「無茶言わないでくれる?俺だって命は惜しい。っていうか、逃げ切れる訳無いでしょうよ……」
睡眠時間も削りに削り、結果の見え切った下らない茶番に付き合っている暇なんて無いのだ。それでも無理に追い出さないだけ、有難く思って欲しい――彼女は嵐を呼ぶので、出来れば今すぐ去ってもらいたいのがカカシの本心だった。案の定、カカシが懸念した通りの嵐は然して時を置かずして、彼女と同様に窓から火影室へ訪れた。
「匿われたいならオレが好きなだけ匿ってやるから、とっとと捕まれよ。何処に隠れても無駄だって言ってんだろうが」
「いや、ナルトの場合、"匿う"じゃなくて、"囲う"の間違いでしょ!?」
鮮血の様に真っ赤な羽織を棚引かせて颯爽と現れたのは、不機嫌そうな、それでいて嬉しそうなうずまきナルトだ。眦には、艶やかな朱色の隈取――感知、探知に長けた仙人モードの証が認められる。「だから、逃げ切れる訳なんか無いって言ったのに」と、カカシは隣で蹲る少女を尻目に肩を竦めた。
余裕綽々の笑みを浮かべ、少女へにじり寄る蝦蟇の仙人と、蛇ならぬ蛙に睨まれ硬直している状態の少女。火影としては、彼女が無駄な抵抗を止めて、火影執務室に積み上げられた書類の山を崩さぬよう、大人しく投降してくれる事を願うばかりのカカシであった。
(君に恋したあの日から診断メーカーより、「隠れても無駄だよ」)
2016/05/03 01:28
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