伊作に無茶を叱られる

「全くもう、またこんなに擦り傷をこさえて、……少しは大人しく出来ないの?」

「いや、うん。分かってるんだけどね」

私の右腕に出来た擦過傷に、伊作は手際良く薬研で潰した薬草を塗り包帯を巻いてゆく。医務室の一角では、日常茶飯事と呼べる位には見慣れた光景だ。先日、左の膝に作った小さな切創もまだ癒えてない内の負傷で、呆れた様子で溜息を零す伊作には苦笑を返すより他は無かった。

「君は女の子なんだから。顔に傷でも負ったら大変だよ」

「うう、ごめんなさい。伊作が優しく手当てしてくれるもんだから、つい甘えちゃって」

馬鹿だなあ、と慈母宛らに柔らかな微笑を湛えた彼に、そっと肩を抱き寄せられる。「怪我なんかしていなくても、優しくしてあげるのに」――聞こえた声音は既に、酷く優しい。自惚れても良いだろうかと、その仁愛に浸るべく温かな胸板に顔を摺り寄せてみる。一定の拍子で繰り返される鼓動に安堵を覚えた。

(伊作に厳しく介抱され、シュンとなってる所を抱きしめてもらう話。ネタのご提供、どうも有難う御座いました!)

2016/05/02 23:22


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