おそ松の「月が綺麗ですね」
おそ松は昔から何と言うか、単純に、物凄く要領が良いんだと思う。勉強が出来るというより地頭が賢いという様な、まさしくそんな感じだ。悪戯だって趣向を凝らしていたし、今もそうだけれど金にがめついから、いざ自分の懐が暖まると分かれば、本当に要領が良かったのだ。
世にも珍しい六つ子の長男で、何をするにも兄弟を率いて取り纏めるのは、彼の役目だった。悪童だった六つ子はかつて全員が同じ様な外見を極めていて、彼ら六人を見分ける事も、大人しく従わせる事も、彼らの父母でさえ難儀していた。比較して、まああくまでも比較してだが、長男である彼が最も、兄弟を治められていたんじゃないだろうか。
「えー?どうだろな、……今となっては全員、勝手気ままで、俺の言う事なんて、聞きやしないけどなあ」
「ニートである今現在の俺達にとっては、お母様の言う事が絶対だし」と開き直って笑う姿は些か情けなくもあるが、今でも兄弟からそこそこ慕われているように思う。少なくとも、他人の私からそう見えるのは事実だと伝えれば、彼は苦笑して鼻の下を擦る。ちょっとだけ、その頬がうっすらと紅く染まっている気がして、何だか息が詰まる。
「あー、でも、流石の俺もお前にだけは敵わないわ」
そんな、眉尻を下げて笑う顔なんて滅多に拝めたものじゃない。まじまじと眺めていると何故か胸の奥が締め付けられた感じがして、助けを求める様に彼の名を呼んだ。「ほんと、可愛くてどうしようもないね、お前」――囁かれた台詞は、どろどろに溶けたアイスよりもずっと甘ったるかった。
(月が綺麗ですね、診断メーカーより)
2016/05/03 01:33
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