手を拱くおそ松
※若干、兄さんがヤンデレかもしれないので下げます。
「愛してる」と伝えたら、それまで必死に平静を装っていたであろう彼女の顔から表情が消え失せた。ぴしりと音でも鳴っていそうなくらいに、身体を硬直させる様が見ていてとても愉快だ。知ってるよ、お前が俺にその言葉を言って欲しくない事も、言わせないような空気を何時もわざと作り出していた事も。きっと今も、どうやってこの状況を上手く打開するか、少ない脳味噌ぶん回して考えているんだろう。
けれど、そうは問屋が卸さないってなもんで、俺だって此処まで来て引き下がれる訳も無い。駄目押しとばかりにもう一度、正面向かって「愛してる」と告げたら、彼女は今度こそ表情をぐにゃりと歪ませた。思わず笑みが零れる――ああ、その顔、俺に振り回されて感情を持て余して泣きそうになっている、その顔が見たかったんだ。
知ってるよ、お前が俺に対してずっと想いを寄せてくれていた事も、やがてそれを不毛な恋だと諦めようとしている事も。けれど、そうは問屋が卸さないってなもんで、俺だって今更彼女を諦めるつもりなんて微塵も無い。出来るだけ優しく手を伸ばせば、彼女は同じだけの距離を逃げていってしまうだけだったから、不要な優しさは自ら殺してやった。逃がしたくない気持ちの方が大きくて、どうしても手に入れたくて、「愛してる」の鎖で彼女の心を雁字搦めに縛り上げた。
彼女が尚も素直に俺を受け入れられない"悪い子"なら、如何なる手段を使っても分からせるまでだ。なあ、お前がどれだけ俺への恋を大切に育ててきたかは知らないけど、自分で育てたからって自分で枯らすなんて、許さないよ。俺が気紛れにほんの少し水を垂らしてやっただけで、今にも開きそうになってる胸元の花、さっさと咲かせちゃえば良いのに。びくり、と触れた頬が強張りながらも朱に染まってゆく様を見下ろして、ひっそりと笑う。
「なあ早く、俺を愛してるって、お前も言えよ」
俺がお前の心を縛る様に、お前も俺の心を縛ってくれたら、どんなにか幸福だろう。重過ぎる愛を枷に入水して、そのまま昏く深い水底へと二人きりで沈めて死ねたら、それこそ最高のハッピーエンドだ。だから、ねえ、ほら早く言ってよ、こっちはもうお前を引きずり込む準備は万端なんだからさ。
(愛してると伝えたら診断メーカーより)
2016/05/03 01:45
ALICE+