ローテーブルの上に放置された女性用下着のカタログ。
名前は...シャワーの音が聞こえるから風呂か。
んふ、見ちゃおーっと。
表紙は下着姿の、テレビでもお馴染みのモデル。会った事あるだけにあーこんな体してるんやぁって、ちょっとニヤけてもうたりして。
ペラペラ捲ると、色とりどりの下着を身に着けただけのモデルさん達の姿に頬が緩むのも仕方ないと思う。
やって俺、男やし。
そしてやっぱり出てくるモデル。俺の友達。
細い手足に括れたウエストと大きすぎず、でも小さくないおっぱいがバランス良くて、やっぱりスタイルええねんなぁ、とか。
いつもつるんでる人のこんな姿見るん、なんか変な気持ちになるやんなぁ。
向こうはモデルやし、気にもしてへんのやろうけど。
にしてもちゃんと飯食うてるんかと思う程痩せたモデルのちっぱい、細いけどガリガリじゃなくて女性らしい丸みのあるモデルの少し大きめのおっぱい、細いけど、どん!と見るからに迫力のある大きいおっぱい。
(あのおっぱいには夢が詰まってるんや)
色んなおっぱいが見れる下着のカタログ。なんやねんヘタな雑誌よりええやん。
中学生か高校生くらいまでやったらこれで十分抜けるんちゃう。
うわー俺が高校生の頃もあったらよかったのになぁ、なんて。
この下着名前に似合いそうやなーとか、こんなスッケスケの名前が着てたらたまらんやろなとかTバックもええなぁとか、そら傍から見たらヘラヘラヘラヘラしとったと思う。
自覚もあるわ。やって男やもん!女の子大好きやし!下着姿の女の子とかご馳走やん!
むふっなんて声も漏れてたかもしれん。
名前の「何してるの?」って声が聞こえるまで、無意識で見入ってたんやろな。
びくっと大きく体が揺れた。

「びっくりしたぁ、出たん?」
「びっくりするほど集中してたの?」

お風呂上がりの名前は、濡れた髪に暑くなってきたからとTシャツのワンピースみたいなんをストンと着てる。
痩せた細い体。ぎゅっと抱きしめたくなるなぁなんて、ヘラっと笑って見せても名前はニコリともしない。
俺がこんなん見てヘラヘラしとったからヤキモチかぁ。
ほんまに可愛いなこの子。

「え、なんか怒ってるん?」
「別に怒ってないけど」
「ちゃうやん、ここにあったから見てただけやん」
「どうせおっぱい見てたんでしょ」
「はぁ?」
「スタイルいいなーってヘラヘラしてたんでしょ」
「ちゃうって!もう、」
「別にいいけど!」
「いや、こんなんで怒んなや」
「だから怒ってない」
「怒ってるやん」
「どいつもこいつもおっぱいおっぱいって...」
「はぁ?」
「何が自分のおっぱいに自信を持って、だよ!」
「え?ちょ、なに?」
「おっぱいなんて脂肪の塊なんだから!」

うわーん!と走って寝室に行ってもうたけど、なんなんあれ。
別に俺おっぱい見てたわけちゃうし!...ちょっとは見てたけど。
なに、キスシーンとかラブシーンには嫉妬せえへんのにこんなとこですんの?
なんやねんめっちゃ可愛いやん。
むふっほんま手がかかるわぁ。
るんるんと足取りも軽く寝室に入るとこちらに背を向けて毛布を被ってる名前。
抱き枕にしがみついてる背中を突ついても無視。

「名前?」
「.........」
「なぁ、」
「.........」
「なんで無視するん」

拗ねた名前も可愛いなぁなんて、ニヤニヤしながら毛布に潜り込みぴったりと後ろからくっついて。
こっそり手を回し、薄い布の向こうにある小さな膨らみにじりじりと手を伸ばした。
瞬間。
名前の小さな手が俺の手に重なったのかと思ってん。
んふ、可愛いなぁって思わずデレっとした瞬間、手の甲の肉の薄い所をぎゅうっと抓られた。

「いったぁ!ちょ、なにぃ?!」
「触らないで」
「そんな怒らんでもええやん。ちょっと見てただけやん」
「怒ってない」
「怒ってるやん。何が気に入らんの?」
「...別に」
「別にちゃうやん。なんなん?ちょ、こっち向いて」

背中を向ける名前を転がしこちらに向かせると、怒ってると言うよりは拗ねたように唇を尖らせていた。
肘をついて、髪を撫でる。

「何よ、どうしてん?」
「べつに...」
「エリカ様ちゃうねんから」
「だって...」
「うん?俺がおっぱい見てたんが気に入らんかったん?」
「...ちがう」
「ほな何ぃ?」
「...みんなおっぱい好きじゃん」
「え?そら...まぁ...」
「亮ちゃんだって大きいおっぱい好きだし、」
「ああ、でもまー男やから、そら大きいおっぱいは魅力的に見えるで?でも亮ちゃんやって毎回毎回おっぱいの大きい子とばっかり付き合ってるわけちゃうし、」
「ちょっと!亮ちゃんのそう言う話聞きたくない!」
「あ、ごめん...でもな、」
「忠義だって...」
「ん?」
「おっぱい大きいAV見てるの、知ってる」
「えぇっ?!ちょ、それは...だから、あの...」
「別にいいの。おっぱい大きいAV見てても。見るなって言うつもりもないし。よそのおっぱいが大きい女の子と浮気されるより全然いいし」
「ぅええ?ちょ、なんて事...」
「私のおっぱいが小さいから、大きいおっぱい見たいって気持ちわからなくもないし」
「いや、ちゃうやん!そんな、俺巨乳モノ見てへんやん!あの人らはAV女優名やからある程度みんなあるし、偽物も多いやん!」
「うん、わかってる。...でもね、」
「うん、」
「貧乳がコンプレックスだから、どうしても気になっちゃうの」

「ごめんね、貧乳で」なんて俯かれたら俺どうしたらええの?
いじらしくて、可愛くて、でも胸が痛む。

「なぁ、聞いて。おっぱいが好きなんは、それは男やからしゃあないねん。本能やねん」
「うん、」
「男やからさ、揺れてるおっぱい見たらやっぱ気になってまうねん。でもな、おっぱいが大きいから好きになるとか、おっぱいが小さいから付き合わへんなんて事絶対ないねんで?」
「うん」
「逆におっぱいだけで付き合うなら体しか好きやないって事やん。みんなそうやで。亮ちゃんやって、好きな子やったらおっぱいが大きかろうが小さかろうが関係ないねん」
「...ん、」
「だから、貧乳でごめんなんて言わんで?俺は名前のおっぱい大好きやで」
「本当?」
「ほんま。やってめっちゃびんか...いったぁ!」

「めっちゃ敏感で攻め甲斐あるもん」って、最後まで言う前に顔を赤くした名前にどつかれた。
「変な事言わないで!」とぷりぷり怒る名前を宥めながらイチャイチャする。
俺からしたらそんな事くらいって思っても、女の子にはやっぱりデリケートな問題なんやな。
気を付けよ。



「でもなんで突然?」
「今日ワイドショーでね、美おっぱいコンテストってやってたの」
「美おっぱいコンテストぉ?何それ」
「モデルのミギーがね、自分のおっぱいに自信を持ってとか言ってて、ただでさえイラッとしてる時に忠義がカタログ見てニタニタしてたから...」
「名前、おっぱいはな、おっぱいである事に価値があんねん。おっぱいはおっぱいであるから素敵やねん。おっぱいに優劣付けるなんてカスやで」
「え...、忠義ってそんなにおっぱい好きだったの?」
「え?ちょ、引いてる?」
「いや、別に...」
「ちょっとぉ!名前?!」



--END--
2016.11.30