※雪ちゃん=ホワイト


「ただいまー」

勝手知ったる我が家の如く(まぁ、半分俺んちみたいなもんやけど)いるはずの名前に声を掛けながらブーツを脱ぐ。

「名前ー?」

いつもなら出迎えてくれる名前が来ない。
テレビつけっぱなしで寝てるんかな。
灯りが漏れるリビングに続く扉を開ければ「おかえりー」なんてソファーの向こうから声が聞こえる。
コートを脱ぎながら覗き込めば着る毛布なるガウンを羽織った名前がふかふかのラグに座って一生懸命テレビを見つめていた。
亮ちゃんが出てる番組でもなさそうやし、ええか。
手洗いうがいを済ませ部屋着に着替えて、キッチンでビールとつまみを用意していても何も言わない。
おかしいな。いつもならなんだかんだ、今日あった面白い事やら腹が立った事なんかを教えてくれるんやけどな。

「何見てるん?」
「んー?エンジェル」
「エンジェルぅ?」

名前を足の間に入れるようにソファーに座って画面を見ればなるほどな、と。
自慢の大きいプラズマテレビには全く実用性の無さそうな下着姿のモデルがランウェイを歩いている。
名前の好きな下着のブランドのファッションショーや。
日本では買われへんからと、海外に行く時はいつも買ってきてと頼まれるやつ。
そう言えば雪ちゃんも言っとったな。
今日はショーがテレビでやるからソッコー帰るから!巻くよ!とか。
そんで亮ちゃんがいらん事してマジギレされとったやつか。

「雪ちゃんも見る言うてたで」
「本当?女の子はみんな好きだよきっと!」

「あ、男も好きかもね!」あはは、なんて笑う名前の視線はエンジェル達に釘付けで。
帰ってきたから一度しか目合ってへんねんけど。
なんか面白くなくて足を名前のお腹に巻き付けるように乗せれば、その足を抱くように小さな手が触れた。
可愛い。
確かにめっちゃ美人やし、めっちゃスタイルいいし目の保養やな。
眼福ってやつ?

「ほんま、すごいな」
「でしょー?本当に憧れる」

「細いのにおっぱいは大きいし、お尻は丸くてぷりん!だし、みんな美人だし!きっと動物学的に私とは違う種類なんだろうなぁ...だってここから足生えてるんだもん!」
なんて笑いながら肋骨の辺りを指さす名前が可愛くて仕方ない。
確かに背も高いし足も長いしスタイルもいい美人やけど、俺には名前のほうが何倍も魅力的やけどな。
とは恥ずかしくて言えへんから、旋毛にキスをして艶々の髪を撫でた。

「男の人って、こういう人とワンチャンしたいとか思うの?」
「えー?どうやろ?妄想の中ではしたいかもな」
「妄想?」
「こんだけ完璧やとよっぽど自分に自信ないと腰が引けるんちゃう?」
「そうなの?」
「わからんけど、俺はちょっと自信ないわ」
「ふうん?私が男だったら絶対ヤりたいけどなぁ」
「あっはっは!何を言うねん!」
「だってさー超魅力的だし、なんか興味あるじゃん!」
「まぁなぁ...」
「興奮するしね!」
「もうしてるやん(笑)」
「忠義は興味無いの?」
「俺はエンジェルより名前の今日の下着の方が興味あるわ」

出来る限りいやらしく名前の背中を撫でる。
名前は色んな下着を着ける。
黒とかネイビーが割と多いけど赤やピンク、淡い水色なんかも着ける。
モノトーンの服が多いから下着くらいは明るい色を着けたくてなんて言ってたけど、「今日は忠義の色だよ!」なんて緑の下着を見せてくれた時は朝から興奮したよな。
黄色の下着の時はちょっとイラっとしたけど。

「んふ、今はノーブラ」
「まじか!ちょ、めっちゃ興奮するやん!」
「なんでよ(笑)」
「えー?なぁ、名前のノーブラ姿見たい」
「エンジェル終わったらね」
「いつ終わるん?」
「残念ながらもうすぐ終わるよ」
「はよ終わらへんかなー」

のしかかるように抱きしめて首筋に顔を埋める。
名前の甘くて優しい匂いにつられるように唇を寄せれば、擽ったいのか首を竦めて体を揺らす。
くすくすと笑う声が心地よくてこのまま寝てしまいそうになる。
穏やかでゆったりと流れる時間が、慌ただしい日中の疲れを癒してくれる。
幸せやな。こういうのを幸せって呼ぶんやろな。



「はぁー、終わっちゃったぁ」
「終わった?!」
「今年のショーも最高だったぁ」
「よし!行こ!はよベッド行こ!」
「でも...やっぱりエンジェルの後に見せるのは...嫌かも。貧相すぎて」
「えっ?」
「今日はこのまま寝よ?」
「ちょ、え?なんで!」
「歯磨きしてくる」
「名前?なぁ、名前って!ちょっと?!」



--end--
2018.3.10