「ただいまぁー」 「おかえり」 玄関まで出てきた名前は部屋着でもパジャマでもなく、スキニーデニムにTシャツだった。 何それなんか亮ちゃんみたいな格好。 いつもはすぐ部屋着に着替えてるのに。 でもニコニコ笑って『お疲れ様』なんて鞄を受け取ってくれるのがめっちゃ可愛い。 「なんで服着てるん?」 「ん?今さっき来た所だから」 「え?そうなん?なんで?」 「なんでって、家主がいないのになんか...」 「えー?なんなら昨日から泊まったらよかったのにー」 「忠義いないのに?」 と困ったように笑う名前。 こういう遠慮がちな所も好き。 大体女の子って合鍵渡したらいつでもうちに来て、俺が居らん時でも許可もなく図々しく居たりするもんやと思ってた。 って言うか今までそうやったし。それでモメた事も一度や二度やないし。 でも名前はあんまり合鍵を使おうとしない。 俺は名前にはいつでも来て欲しいし、居らん時に来てサプライズで出迎えて欲しいとも思うのに。 今日みたいに待っててって言うてもこうやってギリギリに来たり、俺の方が早く家に帰る事もある。 そんなに遠慮せんでもええのにって言うてもずっと変わらない。 好きな所やけど、もっとグイグイきてくれてもええのにな。 「お風呂は?一応入れといたけど」 「入るーけどその前に」 「ん?」 いつの間にか部屋着に着替えた名前が部屋に着いて真っ先にいれたであろうコーヒーも持ってソファに座った。 その部屋着は俺のリクエストでいつも俺のTシャツに短パン。だって大きいのダボッと着てるん可愛いやん。 そんな可愛い名前の隣に座ってソファの背もたれに腕を乗せてサラサラの髪を撫でる。 「なんか言う事あるんちゃう?」 「......あ、」 「うん」 「錦子たんの写真ありがとう!」 「そっちかい!」 「え?違うの?」 「もー、ほかにもあるやろぉ...」 「うーん...お疲れ様?」 「それから?」 「......カッコヨカッタデス」 「ほんまに思ってるん?」 「思ってる思ってる!」 うふふっと笑う名前は可愛いけど、絶対思ってへんやろ。 なんと言っても亮ちゃんのファンやし亮ちゃんしか見てへんやん。 「ねぇ、さっきくれた写真なんのやつ?見たことないんだけど」 「ああ、あれ?あれ丸が撮った写真やねん」 「丸ちゃんが?」 「他にももらってきたけど、見たい?」 「見たい!見たい見たい!」 「ほなチューして」 「えぇ?」 「1枚につきチュー1回」 「......んー」 チュッと可愛い音を立てて離れた名前の唇。 うふっと笑う名前にえへへっと返してスマホを操作する。すぐに名前のスマホがピコンと音を立てた。 「はい、1枚な」 「あー!かわいい!錦子たん可愛い!」 それから貰ってきたキャンジャニの写真計18枚を18回のチューと交換で送った。 なんなん、なんか...なんやろなんか腑に落ちひん。 それでも可愛いだのなんだのってキャッキャと楽しそうにしてる名前を見るのは悪い気はしない。機嫌も直ったみたいやし。 ずっとスマホ見てるけどな。 なんなら俺が風呂から出てきても見てたけどな。 髪を乾かしてもう寝るで、とベッドに連れ込んでも離さないスマホ。 俺に背中を向けて見てる。名前の頭越しに錦子やらすば子やら丸子が見える俺の気持ちよ... なんなら腕枕してる俺の手が邪魔らしい。 ひどい! 「ちょ、もうそれやめて。寝るって」 「えー?」 「こっちからも見えてんねん錦子ぉ」 「本当に可愛いよね」 「可愛ないわ。ほら、もー」 後ろから取り上げたスマホをベッドサイドのチェストに乗せた。 その時全身で名前に乗り上げたらぐぇっなんて声出してたけどこれくらい俺の気持ちに比べたら可愛いもんやで。ふんっ 「ねー」 「ん?」 「ありがと。私がキャンジャニ見れなかったからくれたんでしょ?」 「あー...だって名前絶対機嫌悪いと思ったからぁ」 「教えてくれてもよかったのに...」 「だってネタバレ嫌いやん」 「そうだけどぉ...でもオーラスだけは来たほうがいいよって言ってくれてもよかったじゃん」 「ふっヤスと同じ事言うてる」 「でしょ?やっぱりそう思うよ。わかってたら何としてでも行ったのに!」 「んー...」 くそー!なんてバタバタしてる名前をぎゅっと抱きしめる。 シャンプーのいい匂いのする髪に鼻を突っ込んで胸いっぱい吸い込めば、じわっと眠気が襲ってくる。 「もう寝よ...眠い」 「ん、おやすみぃ」 「おやすみぃ」 名前の暖かい体温と疲労感で心地よい眠りに誘われて、ざわざわと耳に残る騒音も何故か心地よくて。 あー気持ちええ...と眠りに落ちる寸前。 パッとフラッシュバックする光景。 俺の乗るトロッコが名前の横を通った時、一切俺を見る事ない上にトロッコを避けるように俺の向こう側を覗き込んだ名前。 はっ!これ!言わなあかんと思ってたやつ! 「ちょ、名前?なぁ、名前!」 「んぅ...なにぃ...」 「昨日のあれなんなん!なぁって!」 「うん...」 「うんちゃう!ちょ、起きて!」 抱きしめた腕を揺らしても全然起きひん。 なんなんこの子こんなに寝つきよかったっけ?! 「もうなにぃ...」 「なにぃちゃうわ!ちょっと!」 「あしたにしてよぉ...」 「言うたな?明日やで!明日朝からお仕置きやからな!」 「ぅん...」 「もうっ!」 むぎゅっと潰れるくらい抱きしめる。 きっと名前は亮ちゃんの夢でも見てるんやろう。もしくは錦子の。 俺の夢なんか見ないくせに。 コンサートだって俺の事は一切見ないで亮ちゃんしか見てないし。 グッズだって亮ちゃんのしか買わないし。(だから自分で自分のうちわを持って帰って名前家に飾ってる)(いつの間にか片付けられてるけど) テレビだって亮ちゃんが出てなかったら俺が出てても早送りするし。 でもそんなつれない名前が好きなんだから仕方ない。 旋毛に鼻を押し付けてスンスン匂いを嗅いで足を名前に巻き付ける。 名前の匂いに包まれて眠る。 幸せやなぁ... 僕の彼女は錦戸担 --END-- 2015.9.21 |