付き合い始めた頃は今より家が遠かったから、俺の仕事が終わった後会いたいって思っても名前も仕事があるしなかなか会えなかった。 俺が行くからと言っても「疲れてるから大変でしょ」とやんわり断られたり。 要は俺に気を使ってくれていたんだろうけど、俺はそんな事よりも会いたいのにお前はちゃうんか!と喧嘩した事もある。 だからいつでも気兼ねせず会えて、時間も労力も掛けず会うには一緒に暮らすしかないと思った時、パズルのピースが嵌ったようにスッと心が落ち着いたのだ。 そうや、一緒に住んだらええやん!狭い家でもないし、いいやん!って。 それからの俺は誰が見てもるんるんとしていたらしい。名前と一緒に住めばいつだって名前に会える。名前をぎゅってしてチューだっていつでも出来る。 そう思っていたけど、いざ名前に一緒に住まへん?と言ったらバッサリと拒否された。 「え?それはないでしょ」やって! 俺驚いたよね。わーい!嬉しい!って喜んでくれるもんだとばっかり思ってたし。 なんでどうしてと暫く食い下がったけど、一緒には住めないの一点張りで泣く泣く俺が諦めた。 なんで一緒に住みたくないんやろ、前の女の子達は一緒に住みたいオーラばんばん出してきてたのに。 なんでずっと一緒に居らなあかんねんって無視してたけど。 それからの俺は打って変わってむすっと不機嫌だった。それは自分でも自覚がある。 だって名前と一緒に住んで、バラ色の生活が待ってると思ってたのに。 会いたいのになかなか会えない時間が募り更にイライラして、そして爆発した。 ヤスには呆れられたけど、すぐに不動産屋に駆け込み部屋を決めた。名前の。 敷金も礼金も3ヶ月分の家賃も払った。 家が遠いからなかなか会えないのなら、近くに引っ越せばいい。 俺は簡単に引っ越せないから名前が近くに来ればいい。 そう思って新居の鍵を持って名前の家に行った。 むすっとした顔で突然訪ねた俺に驚いていた名前に、むすっとしたまま鍵を差し出した。 これはなんの鍵か尋ねる名前に、名前の新しい家の鍵だと告げた時の驚いた顔がまた可愛かった。 「はい」 「え?なんの鍵?」 「名前の新しい家」 「は?新しい家?」 「引っ越して」 「何、え?どういう...」 「俺と一緒に住みたくないんやろ?でもここやったら遠いやん。遠いからなかなか会えへんやん。名前は会えへんでもええかもしれへんけど!」 「え?え、なに...」 「だってそうやろ?いっつも断るやん。俺ばっかり会いたいみたいやん」 「そんな事...」 「あるやん!会いたいって言うても『疲れてるでしょ』とか『明日も仕事でしょ』とかさぁ!」 「だからそれは」 「わかってるよ、名前が俺に気使ってくれてるんはわかってんねん。でも俺は会いたいねん」 「だってすぐ疲れたーとかしんどいーとか言うじゃん!」 「言うけどそれとこれとは別やん!」 「何が別なの?仕事に支障が出たらいけないって思うから会わないんでしょ!」 「だから名前は俺と会わんでもええって事やろ!」 「そんな事言ってないでしょ!」 「だってそうやん!そこまで会いたいと思ってへんからそう言うんやろ!普通会いたいって言うやん!俺彼氏やで!」 「はぁ?」 「そうやんな、名前は亮ちゃんのファンやし?俺が亮ちゃんやったら会いたいって言うんやろ!」 「は?今亮ちゃんは関係ないでしょ!それに普通って何?誰と比較して普通なの?今までの彼女はそうだったかもしれないけど私は違うから」 「は?」 「そもそも忠義は彼女としょっちゅう会ってベタベタしたいのかもしれないけど、私は元々そういうタイプじゃないの」 「だからなんやねん」 「だからしょっちゅう会いたい忠義と自分の時間が欲しい私は合わないって事」 「何それどういう意味や」 「合わないんだからこれからもきっと何度もこんな言い合いになるんじゃない?」 「何が言いたいん」 「終りにしたほうがいいんじゃない?」 「はぁ?別れるって言いたいん?」 「それしかないでしょ」 「なんでそうなんねん!」 「私、事あるごとに亮ちゃんのファンだからとか亮ちゃんならとか言われるの嫌だし」 「それは...しゃあないやん!名前が亮ちゃんのファンなんは事実やろ!」 「だから私何度も言ったし断ったよね?私は亮ちゃんのファンだからって」 「そうやけど...」 「こういう事になるって、少しも考えなかったの?」 「だって...好きやねんもん...」 「.........」 「一緒に居りたいねんもん...名前は違うん」 「違わないけど...」 「ほなええやん、引越してよ」 「そんな簡単な事じゃないでしょ」 「簡単やん。荷物まとめて引越すだけやん」 「それはそうだけど...」 「俺は名前の一緒に住みたくないってわがまま聞いたんやから名前も俺のわがまま聞いて」 「そういう問題?」 「そうやろ。俺は別れへんし、名前は一緒に住まへんなら近くに来るしかないやろ」 「会社もここより近いんやで」と言うと、呆れたようにため息を吐いた名前。 それから俺は強引に押したり甘えたりありとあらゆる手段で名前を頷かせた。 そして部屋を見に行った名前が、こんないい部屋しがないOLの私が払える家賃じゃないとかゴネたんやけど。 そんな心配いらん!俺は稼いでるんや!とさながら信ちゃんみたいな事を言って丸め込んだ。 俺のわがままで引越しさせるんやから、勿論引越しにかかる費用も家賃も俺が払うつもりやったし。 なんなら新しい家具とか、ベッドも大きいの買うつもりやったし。 まぁ、それでもまたモメたんやけど。 それでも名前は直近の3連休で引越しをしてくれた。 それが今俺が寛ぐこの部屋である。 「んふっ」 「なにぃ?思い出し笑い?」 「名前がここに引っ越して来た時の事思い出してた」 「あー...」 「名前って結構頑固やねんな。俺あの時初めて知ったわ」 「私も、忠義がかなり強引でわがままだってあの時初めて知った(笑)」 うふふと笑う名前が愛おしい。 「なんで同棲したくなかったん?」 「だって同棲とかフライデーされたら困るでしょ」 「ふーん...でも家の近くのマンションに出入りしてるほうが怪しいけどな」 「......!そうじゃん!気付かなかった!」 俺は最初から気付いてたなんて言ったらまた拗ねるから黙っとこ。 やだどうしよう!なんて慌ててる名前をソファに押し倒して乗り上げて、可愛い唇に噛み付けば途端に目を潤ませて黙り込む。 名前を黙らせるにはこれが一番やねん。 勿論、これでもかって決め顔で。 なんだかんだ名前は俺の顔好きやからな。えへっ ちょっと頑固でドライだけど、デレた時は最高に可愛い俺の彼女。 (俺、ツンデレは嫌いなはずやったんやけどなぁ...) 僕の彼女は錦戸担 --END-- 2015.9.25 |