22時を少し過ぎてツアーのリハが終わった。
いつもより少し早く終わったとは言え22時を過ぎていれば、普段なら名前の家にはいかないけど今日は金曜日だ。
OLをしている名前は明日は休み。
食事に行くメンバーを尻目にいそいそとスタジオを後にした。

驚かせようと静かに鍵開けこっそりと部屋に忍び込んだ俺の耳に名前の鼻をすする音が聞こえ、風邪でもひいたんかなと靴を脱いでいると、鼻をすする音と共にしゃくりあげる声が聞こえた。
え?!泣いてる?!
驚かせようとしていた事なんてすっかり忘れ、大きな音を立ててリビングへ繋がるドアを開けた。

「名前!」

大きな声で呼ばれ、驚いてこちらを向いた名前の目は赤く、頬が涙で濡れていた。

「え、忠義...どうしたの」
「どうしたのちゃうやん!なんで...」

涙の膜で潤む瞳を覗き込むように名前の隣に座り、濡れた頬を撫でる。


「なんかあったん?」
「え?何もないけど...」
「ない事ないやん。どうしたん?」
「だから何が?」
「何って...泣いてるやん」
「ああ、ドラマ見てたから」
「ドラマ...?」

「あれ」と名前が指さすテレビにはイケメン俳優主演の医療系のドラマが流れている。
今、まさに赤ちゃんが産まれる所だ。
なんやねんドラマか、とホッとしたような肩透かしを食らったような俺が脱力した時には名前はまたティッシュを片手にぐずぐずと鼻を鳴らしながらテレビに見入っていた。
コートを脱いでソファと名前の間に体を捩じ込んで、名前の体に腕を回すとぎゅっと俺の手を握る小さな手。
鼻を啜りながらドラマに見入る名前の肩に顎を乗せ、俺もぼんやりとドラマを見る。
お母さんが必死に頑張っている、その横でオロオロとどうしていいかわからないような不安そうな旦那の姿が何故か名前と俺に重なった。
名前が俺の子を産む時、きっと俺もこの旦那のようにオロオロと応援するしか出来ないんやろうな。
名前が必死に頑張って、産声を上げた赤ちゃんはとっても可愛いだろう。
小さな体で大きな声で泣く赤ちゃんを見て、喜びと感謝で俺も負けへんくらい泣いてまうんやろうな。
そう思うと涙が溢れてくる。
ぎゅっと名前の体を抱き締めて、肩に顔を埋めて泣いている俺と、俺の腕をしっかり握った名前の泣き声がドラマのエンドロールと重なる。
それから暫くお互い何も話さず、鼻を啜る音だけが聞こえた。

「俺...絶対立ち合うな」
「うん」
「俺と名前の子供やったら、絶対可愛いで」
「んふっそうだね」
「...なぁ、名前」
「なぁに?」
「チューしたい」

えー?なんて焦らす名前の頬に、首筋に口付け顔を埋めて、優しい名前の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
擽ったそうに首を竦める名前を横抱きにしてその柔らかい唇にふれる。
何度も唇を合わせ、食んで、舌を差し入れれば迎え入れるように絡みつく名前の舌。
何度も角度を変え、舌を吸い、甘く噛む。
噛む度に小さく声を上げる名前に気分を良くした俺は、部屋着のワンピースの裾から滑らかな足を撫であげる。

「んっ...ちょっと、」
「なにぃ?」
「待っ...んぅ...っ」

触り心地の良い名前の足を楽しみ、ゆっくり下着に指を掛けた。
ここまでええ雰囲気やったと思うねんな。
ここまで来たらもうやる事って1つしかないと思うねん俺は。

「ちょっ...!待て!」
「もーなにぃ?」
「もう!始まっちゃうから!」
「何がよぉ」

「ちょっと離して!」と俺の膝から降りた名前は、当たり前のようにリモコンを手に取った。

「ほら!ちょうどだ!」
「何が...あぁ、これね...」

テレビに映るのは言わずもがな、ちょんまげ姿の亮ちゃんで。
「ちょっとそっち行って」と俺を押しのけてテレビの正面に座った名前は、メガネまで掛けてもうドラマに夢中。
なんやねん俺のドラマの時はメガネすらかけてへんかったやん!
挙句口元は緩んでいて、完全に一人の世界。

「...なぁ」
「うん」
「なぁって」
「ちょっとうるさい。聞こえないから」
「もう!名前って!」
「わかったから後にして」

ノールックで肩を押される。何この扱い。
さすがの俺も拗ねるで!
だってドラマに負ける?
録画してんねんで?
別に今見んでもええやんな?
俺と愛を育んでから録画見てもええやろ?
え、ちゃうの?
ファンって彼氏よりも亮ちゃんなん?
って事は俺のファンは彼氏より俺を優先してるん?
うわー...ほんま申し訳ないわ...
全国の俺のファンの彼氏に申し訳ない気持ちになると共に、なんか切なくなるわ。
こうなった名前はもうどうにもならへんのもわかってるし、このまま風呂でも入ってドラマが終わった後きっついお仕置きしたんねん。

「俺風呂入ってくるな」
「んー」

でも切ない...
重い足取りで浴室に向かいながら、全国のファンの彼氏に改めてお詫びの念を送る。
でも俺メンバーやねんけどな...
切な...


僕の彼女は錦戸担


--END--
2015.12.26