月曜日の夜、名前から「明日と明後日はDVD見るから来ないで」とそっけないメッセージが届いた。
DVDとは俺らのライブなのはわかってる。俺は居らんけど。
なんで?一緒に見たらええやんと思ったけど、これは名前なりの気遣いなんかな。
だからわかったと泣いてるクマのスタンプを連打したら既読無視されてんけど。
それから仕事が遅くまであったりして、結局名前の家に行けたのはその週の土曜日、ラジオが終わった後の今やねんけど。
お土産に美味しいと話題のたこ焼きを持っていつものように合鍵で部屋に入り込んだ俺の耳に届いたのは、深夜にもかかわらず割と大きい音量のCANDY MY LOVEで。
ああ、また見てるんやと思って。
平日仕事してる人はやっぱり土日にしか落ち着いて見れへんもんな、なんて納得する。

「名前?」
「ん?あ、おかえり!」
「お土産買うてきたで。名前が食べたいって言うてたたこ焼き」
「えー!本当?食べたい!」

出来立てやから熱いうちに食べよ、と言うとDVDを一時停止してキッチンに向かった。
ローテーブルにたこ焼きを乗せてテレビを見れば、丸子のアップで止まっている。
ほんまぶすやな丸子。
いただきます!と手を合わせて、美味しーい!と嬉しそうな名前は、たっぷりかかったマヨネーズを口の端にに付けてリスのように頬を膨らませている。

「ほんまやなぁこれ美味い」
「たこ焼き食べたかったんだぁ」
「そうなん?」
「わさびのあれでたこ焼き食べてるの見たらすごく美味しそうなんだもん」
「ほなよかった」
「でもこんな時間に食べたら太るぅ」
「名前太らへんやん」
「私忠義と付き合ってから太った気がする」
「太ってへんやん」

名前はそう言うけど、全然太らへん。
多分、亮ちゃんとかすばるくんみたいな体質なんやろな。
同じように食べてんのに、俺だけ太ってくねん。なんでやろ。
そうかなぁなんて言いながら食べるのを辞めない名前は、もぐもぐしながら再生ボタンを押した。
小さく揺れながら楽しそうな表情で、画面を見つめる名前。
名前の目にはどんな風に映ってるんやろ。
と、一人でしんみりしている所に聞こえた名前の声。

「ああ、本当に...錦子たんって天使...」

えー!うそやろ!ちょ、また錦子!
好きなんは知ってる。
でもさぁ!俺居らんやん!なんで?そこ?着眼点!

「は?」
「錦子たんってまじ天使だよね!地上に舞い降りた天使!」
「天使て...」
「錦子たんってさ、このドームにいる女子の中で一番可愛いよね。なんて言うか、世界一の可愛さ!」

ひぃー!なんて座ってるクッションをぼふぼふ叩きながら、これでもかってくらい錦子の魅力を語る。
始まってもうた...名前の錦子本気愛。
わかってはいるけどさぁ...
複雑やな。挙句の果てに錦子たんなら抱ける!寧ろ金払ってもいいから抱きたい!なんて言い出す始末。
好きすぎやろ。

「忠義もそう思わない?」
「なにが?」
「錦子たん抱きたいと思うでしょ!」
「はぁ?何言うてるんもう...」

錦子ってもう亮ちゃんやん。ノーメイクやん。ヅラ被ってるだけの亮ちゃんやん。
俺が錦子抱きたい言うたらおかしいやん。ホモやんそれ。

「名前ってさー亮ちゃんと錦子どっちが好きなん」
「えっ...」
「え?なんで?」
「いや、どうしよう決められない...」
「えぇ!亮ちゃんちゃうの!」
「うーん...僅差で錦子かな...」
「うそやん!名前レズなん!」
「錦子ならレズでもいい」
「ちょ、うそやろ」
「それくらいの勢いでは錦子好きだなぁ...だって天使なんだもん。エンジェル!」

もう呆れて口が塞がらへんってこの事か。
好きすぎやろ...
俺亮ちゃんと更に錦子超えなあかんの。

「でもなぁ、」
「なにもう、」
「倉子がいなかったのが本当に残念。倉子も大好きだから」
「え、そうなん?」
「うん!倉子大好きだよ!あの性悪な感じがたまらない!」
「性悪て...」
「一回うちで倉子に、」
「ならへん!」
「えー」
「えーちゃうわ」
「ノリノリだったくせにぃ」
「あれは仕事やから!」
「ふーん」
「何よ」
「倉子と百合プレイしたかったなぁって#sozai72_w#」
「ちょっ、何言い出すん!」
「えー?楽しそうじゃない?」

百合プレイて、この子ほんま何言い出すん!
まぁ俺も男やし、レズ物のAVは嫌いじゃないけど。
でも自分が女装するんはなぁ...なんか色々失う気すんねんなぁ...。
でも1度くらいは...アリかぁ?とか悶々と考えてる俺の横で、錦子ー!える!おー!ぶい!いー!に!し!き!こ!とか言うてる。
オタクか!
ほんま、錦子の事になると性格変わるよなぁ。と言うか、これが本来のエイターとしての名前なんやろうか。
俺と付き合ってるから俺の前では抑えてるだけで、友達なんかと一緒の時はこうなんかな。
俺が知らんだけで。
でも「錦子のパンチラ見たいぃ!」って言う名前の心からの叫びは聞かなかった事にした。



「倉子はね、結構人気あるよ!」
「そうなん?」
「うん。だいたいみんな、自担が好きだけど倉子のキャラにみんなクラクラだよ#sozai72_w#」
「そうなん、や...」

複雑や...



--END--
2016.6.20