勢いよく楽屋のドアを開けた亮ちゃんは当然とばかりに私の隣に座った。

「#name2#ちゃん!」
「んー?」
「なぁって!」
「はいはい、おはよ」
「おはよ(はぁと)」
「…どうかした?」
「これ」

些か恥ずかしそうにした彼が差し出したのは、私の大好きなブランドのショッパーだった。
ベージュに白文字で書かれたそのブランド名を見間違えるはずがない。
しかもなかなかの大きさだ。

「えっ、何?」
「あげる」
「だってこれ…なんで?」
「ホワイトデーやん!」
「ホワイトデーって…」
「ええから開けて!絶対似合うと思うねん!」
「あー…じゃあ遠慮なく…」

ニコニコと自分が貰ったかのように嬉しそうな顔を見てお断り出来るはずもなく…
ショッパーの中を覗くと、ショッパーと同じ色の靴が入ってるであろう箱。

「亮ちゃん…」
「ええからぁ!はよ!」

箱を取り出し、蓋を開ける。
ああ、やだなんてこと…
見えたのはピンクベージュの綺麗なピンヒール。
その下には真紅に黒文字でブランド名が書かれた保存用の袋。

「亮ちゃん…」
「ど?気に入った?」
「すっごく綺麗だけど…」
「けど?気に入らん?」
「そうじゃなくて…貰えないよ」
「なんで?やっぱり黒のほうがよかった?」
「んーん、凄く気に入ったし欲しいと思ってたけど…」
「うん」
「こんな高いもの…」
「ええねんそんなん。俺の気持ちやん」
「でも…」
「ええって。ほら、履いてみて?」

膝に乗せた箱からガサツに取り出したハイヒールを持った亮ちゃんは、灰かぶり姫の王子様よろしく私の足元に跪いた。
私の足首を掴み履いてる靴を脱がし、手に持つ上等な靴をその足に履かせた亮ちゃんは満足げに笑った。

「えっちょっと...」
「ほらな、ぴったりやろ!」
「本当だぴったり...」
「えへへっめっちゃ似合ってる」

下から見上げる瞳がすごく嬉しそうで、とっても可愛くて。

「ありがと」
「気に入った?」
「うん。すっごく!」
「よかったぁ」


「ほな俺コンビニ行ってくるな!」と颯爽と楽屋を後にした亮ちゃん。

「はぁ...」

履かされた靴を箱に仕舞いながら思わず出たのはため息。

「なんやねんため息吐いて」
「だってさーこれ...」
「気持ちや言うてんねんから気持ちよく貰ったったらええやん」
「そうなんだけどね...」
「なんかあかんかったん?」
「だって私がバレンタインにあげたの、チロルチョコ1つだよ」
「うそやん!(笑)」
「本当」
「それは...あれやな(笑)」
「あっはっは!亮ちゃんおっもー!(笑)」


「でも買おうか迷ってたからラッキー!」
「俺亮が不憫やわ...」
「ええねん。それが亮の幸せやねん...」


15.3.14
Chloe