幻太郎と嘘付き合戦 - hpmi



「嘘だよ」

もう会わない。そう言った口ですぐさま前言撤回をした私に、幻太郎はムッとした顔をした。いつも飄々としているものの、実は思っていることが顔に出やすい人なのだ。

「いつも人に嘘つくくせに、自分が嘘つかれるのは嫌なんて傲慢だと思わない?」
「……そうですねぇ、自分がされて嫌なことを人にするな。尤もです」
「もう嘘つくのやめようよ」

幻太郎が嘘の話を聞かせていた病床の友人はすでに亡くなっている。もう幻太郎が嘘をつく必要なんてないのに、まるでそれをアイデンティティーにするかのように嘘ばかり並べる彼が嫌いだ。

「やめたいのは山々ですが、嘘を言わないと酸素が吸えない身体になってしまいまして。まあ、嘘ですけどね」
「……もういい。幻太郎、キライ」

まっすぐ向き合おうとするこちらがバカみたいに思えてきて、溜め息をつく。だからと言って、こちらも同じ土俵に上がったってどうしようもないことだ。そっぽを向いた顔を覗き込んできた幻太郎に、じっとりした視線を返す。

「おや、それは嘘ですね」
「嘘じゃない。本当にちょっと嫌いになった。このまま幻太郎が嘘ばっかり言ってるなら完全に嫌いになる」
「それは困りますねぇ」

毛ほども困ってなんかいなさそうな軽い声に、本当に嫌いになるぞ、そう心の中で毒づいたときだった。ふっと笑う気配がして、急に耳元へ近付いた幻太郎の唇が囁く。

「小生は貴女が好きですよ」

それに関しては何も付け足さず、楽しそうに笑って幻太郎は去っていった。ああそうだ、好きだからこんなにも腹立たしい。