焦凍を誘う(拍手ログ) - mha



「うわあっ……」
「どうした?」


お風呂上がり、体重計に載ってみるとしばらく計っていなかった間にかなり増えていた。思わず口から飛び出した悲鳴に、リビングにいる焦凍から返事が飛んでくる。あまりにショッキングな出来事に私がバスタオル一枚巻いたままでとぼとぼ出て行くと、焦凍は「おい服着るの忘れてるぞ」と言ってきた。


「最近コスチュームがキツいなあとは思ってたけど……ああでもあんなに増えてるなんて……そもそもみんなに習ってピッタリのになんかしなきゃよかったんだよ」
「風邪ひくぞ」


焦凍と一緒にお蕎麦屋さんに行くたび、毎回何かしらてんぷらをつけていたのがまずかったかな。突っ込みをスルーし続けてひとしきりぶつぶつ言ったあと、ソファにうつ伏せにダイブしたままちらりと焦凍を見やる。


「ねえ、私太ったと思う?」
「わかんねえ」
「うそ!だって、……キロも増えてたんだよ!焦凍は私の身体に興味ないの!?」


私が憤慨しても焦凍はどこ吹く風で、ソファの端に座ってテレビを見ている。ニュース番組をチェックする時間なのはわかるけど、その反応は頂けない。私は焦凍の視界を遮って仁王立ちをした。焦凍は少しぎくりとしたようにかたまったが、何か言わなければ許されない空気はさすがに感じ取ったようだった。


「太ったっつうより、少し筋肉がついたんじゃねえのか?」


私の身体を上から下に一通り眺めて、焦凍は真面目な顔に戻ってそう言った。そういえば、そうなのかも。最近同僚たちに誘われてジムでキツめのトレーニングに勤しむのにちょっとはまっていたのだった。そっかそっか、ならまあいいか、と私が一人納得していると、焦凍はやれやれといったふうに嘆息した。私はその隣に座り直す。


「私がムキムキになりすぎちゃったら焦凍いや?」
「想像できねえな」
「胸もおしりも全部かったーくなっちゃうかも」
「……」
「いやだよねー、ほどほどにします」


頑張って想像しようとしていたらしい焦凍がちょっとショックを受けているみたいな表情になっていたので、あっさりと前言撤回しておいた。


「で、いつまでその格好でいんだ」
「もうちょっと。焦凍の理性を試してみる」


二の腕をきゅっと締めて胸の谷間をつくりながら寄り添い、私がしゃあしゃあと言うと、焦凍は前髪の下の眉根を少し寄せた。ちょっと不機嫌になったかもしれないけど、そう見せようとしてるだけなのをわかってるよ。


「さっきから」
「はい」
「誘ってんだとしたら、どうなっても知らねえぞ」
「うん」


焦凍の表情は変わらなかったけれど、変わらないまま近距離になって、ソファに引き倒された。胸元に端っこを突っ込んで留めていたバスタオルがはらりとほどける。明るいリビングで恥ずかしいことをしているとは思う。思うけど、そんなのはすぐに捨て去れるくらい、私はいつだって焦凍がほしいよ。