上鳴とバスト測定 - mha
怒らないで聞いてくれ。そう前置きされたら誰だって身構えるに決まってるじゃんと思いながらうろんげに隣を見やると、座敷席で上鳴が土下座していた。
「一生のお願いなんだけど、胸のサイズ測らせてくんね?アンダーだけでいいから!!」
「え、イヤだ」
即答で断ると「待てまてまてちゃんとワケがあるんだって聞いてくれよぉ」と情けない声で食い下がってくる。飲みに誘われて、珍しくお店を予約してくれたと思ったら奥の半個室だったのも上鳴にしては気が利いてるじゃんなんてちょっと気分が良かったのに。とりあえずワケとやらを聞いてやろうと尊大に了承してやれば、上鳴はそれだけでははあと拝んできた。
「実は今度イベントでファンの胸のサイズを測定するっていうのをやることになって、えー、練習をさせてもらいたいんですね」
「何それめっちゃウケんね。本当にファン来るの?」
「それがもう結構応募も来てんだよ!だからちゃんとかっこよく出来るようにしたいんだわ」
プロ意識は結構だけど、動機が不純すぎる。ていうか彼女に頼めばいいのに。あ、今いないんだっけ。こんなこと他に頼める人もいないんだろうけど、一生のお願いをこれで使うなんてやっぱり上鳴はバカだなと思いながら、まあ、アンダーだけなら別にいいかなという気になった。
「じゃあいいよ。今日奢ってね」
「マジかよ!女神様!!もちろん奢りますトモー!!」
カーディガンを脱いで髪をかきあげて、用意周到に持参していたらしいメジャーを持ったまま凝視してくる上鳴にほらどうぞと促した。
「はい、ここでメジャー回して。胸のすぐ下のところ」
「えっとー、膨らみ始めのとこ?その下?」
「下です」
「ハイ。やっぱそうなんだな…」
「残念でした。よっぽど大きい人じゃなきゃ触れないんじゃない」
「だよな〜」
「でもまあ、ファンはドキドキするんじゃない。近いし…」
言いかけたところで、背中にメジャーを回そうと腕を回してきた上鳴と至近で目が合った。抱きつくみたいな体制で、少し顔を赤くした上鳴が上目遣いに見つめてくる。
「……今、ドキドキしてる?」
わざと声を低くして聞いてくるのがいやなところだ。
「しないよ、今更」
「なんだよ!えー、なあ、全然これっぽっちも?」
「はいはいおしまい。贅沢ローストビーフ頼んじゃおっと」
上鳴から身体を離してメニューに手を伸ばす。友達でいるのに慣れきってしまって、ドキドキするとか焼きもちを焼くとか、もう全部今更だよ。