一郎セラピー - hpmi
「好きになりすぎちゃいけないって、常々自分に言い聞かせてはいたんだよ。踏み込みすぎたら、報われなかったときにそれだけ辛い思いすることになるのはわかりきってたし。もう繰り返して身に沁みてるもの」
「……は?何、おまえ、そんなヤツいたのか?」
「うん……つらい……いやでも、出会えたことに後悔はないの。こんな思いするなら好きにならなきゃ良かったとは思わない。でも、でもね、って一郎はこんなの聞かされるの嫌だってわかってるけどどうしても気持ちの整理がつけられないんだよぉぉ」
「いや、男がでもとかだってとか言ってたらはっきりしろと思うが、お前は女だし別に……つーかどいつのせいだよ」
「これです」
「メール……『チケットがご用意されませんでした』……ああ」
ちくしょー!!と叫びながら床に転がる私を憐れんだ目で見下ろして、一郎は読み途中のラノベを閉じ、空いた手でがしがしと頭を撫でてくれた。
「気持ちはわかるぞ」
「うぅ……本当に行きたかったイベントだったのぉぉ」
「整理がつけられるまでは苦しいだろうが、それだけ好きだからこそだ。きっとまた前向きになって、応援できるだろ」
「……一郎ぉ〜ありがとぉ〜」
このほとばしるお兄ちゃん感というか、もとい包容力。なにやら後光が射して見える。
「はぁ……マジでお兄ちゃん」
「ったく、おまえの兄ちゃんじゃねーよ。イベントの日、どうせもう休みとってんだろ。代わりに俺と出掛けっか」
にっと笑う一郎に笑顔を返す。イベントを諦めるのにはまだ少しかかりそうだけど、一郎とデートするのは楽しみで、気持ちの整理はそう遠くないうちにできそうだった。