弔くんとデート - mha
弔くんが一人で大型ショッピングモールに行ってきたらしい。手ぶらで帰ってきて何も買い物をしてきたわけではないようなのに出掛けとはうって変わってすっかり機嫌が直っている弔くんに、私はぶちぶちと文句を言う。
「ずるい、ずるい、私も行きたかったっていうか弔くんとデートしたかった」
「わかったわかった、気が向いたら今度一緒に行ってやるって」
いつもならうるさいとあしらわれて終わるのに、相当機嫌が良かったのかそんな返事が返ってきた。その「今度」は絶対社交辞令で済まさないからねと意気込んでいると、後日本当に弔くんからお誘いが。引きこもりのお化けみたいな弔くんとお日様の下を歩くなんてそれだけでなんだか感動だ。
「嬉しいなあ幸せだなあ、弔くん大好き!」
「それ全部言わないと気ぃすまないのかよ」
「だって楽しいんだもん!」
私の個性は感情を読み取ったりシンクロさせて操ったりすることができるというものなのだけれど、自分においては意識的にコントロールしようとしなければ考えていることがすぐ口から飛び出してしまうので弔くんからはいつもうるさがられている。駄々もれの感情をいったん落ち着けようと一呼吸置いて、ゆったりしたペースで歩く弔くんに聞いた。
「弔くん、何かほしいものとか見たいものあるの?」
「行きたいって言い出したのそっちだろ。おまえこそ何もないのかよ」
「あるよ!あります!えっと……弔くんに似合いそうな服見たいし、あとスニーカーのサイズがあったら同じのほしいし、ちょっとお茶するだけでも」
とにかく弔くんと過ごせるだけで嬉しいよ、そう伝える。普段顔面に装備している手の平はさすがに外されてはいるものの、フードを目深に被っている弔くんの表情はよく見えず、しかし話は聞いてくれていたようで「あー靴ならあっちの店」と方向転換した。
それに着いていきながら、向かいから歩いてくるカップルが仲睦まじく手を繋いでいるのをつい視線で追ってしまった。こんなふうに二人で外を出歩くことがなかったから今までは考えなかったけど、私は弔くんと普通に手を繋ぐこともできないんだなあと思う。そのとき、ふと小指に何かが絡まってきた。視線を落とすとそれは弔くんの細長い指で。
「デートしたいって言ってたもんな」
「う……うん!」
繋いだ小指から伝わってくる弔くんの温かくて優しい気持ちをかみしめて、私は爆発しそうなくらい嬉しい気持ちをこらえた。