心操くんとクラスメイト - mha
夏休みが終わって久しぶりに顔を合わせたクラスメイトは、日焼けした人や髪の色を変えた人など様々だった。しかし一番変わったのは心操くんがマッチョになっていたことだ。半袖から伸びる腕や服の下の身体にはがっしりした筋肉がついていて、ヒーロー科編入も本当にあったりしてね、なんてみんな盛り上がっていた。
「あのっ、ヒーロー科、行っちゃうの……?」
全校朝礼が終わって教室に戻る途中、構内に入ってだんだん列がバラけてくる中で心操くんに追い付いて声をかけた。肩越しに振り返った心操くんがこちらを見下ろして、隈が落ち込む目はちょっと怖いけれど本人に他意がないことはわかっている。
「まだ決まってないよ。でも、行きたいと思ってる」
「そっか…体育祭でもすごかったもんね」
体育祭で普通科から唯一二回戦に進出した心操くんは一時有名人になって、本当はクラスが一緒になったときから気になっていたなんて言えなくなってしまった。本気でヒーローを目指している彼を応援したい気持ちはもちろんあるが、もう手の届かない遠いところへ行ってしまうような寂しい気持ちもあって、でもそれは私の勝手だ。行かないでなんて口が裂けても言えないし、好きだなんて告白も、夢に向かって一心不乱に頑張っている今の心操くんにはきっと余計なものだろう。
「……君は?夏休みどう過ごしてたの」
「え、あ、私はフツーに、宿題やって友達と遊んだり、家族旅行したり」
「そっか」
「心操くんは、すごく身体鍛えたんだね」
「うん、ちょっとね」
「ちょっとじゃないよ、すごい変わったよ」
周りの足取りに合わせて歩いていると、あっという間に教室が見えてきた。ふわふわした会話の着地点なんてなくて、もしもこれが心操くんと話す最後になったらどうしようと思っていたそのとき心操くんがちらりとこちらを振り返った。私の顔を見て、微苦笑しながら「あのさ」と言葉を繋ぐ。
「……そんな顔されてもなあ」
「え!!ごめん、えっと……」
「別に、いなくなるんじゃないから」
私が考えていたことを汲み取ったみたいにさらりと言い加えて、心操くんは先に教室に入っていった。