俺、宣誓
「…え?」
「もっぺん言ってやろーか?くだらねーって言ったんだよ」
その言葉を聞くとあなたのなまえは見る見るうちに顔を赤くした。
「た、高杉さんに私の気持ちなんて分かりませんよっ!高杉さんには!!」
どーみても怒っている様にしか見えなかった。
「そーだよ、高杉晋助様には分かんねーわ。俺、お前みてーな奴嫌いなんだよ。あいつらにされるがままでいいのか?いじめが辛いからってお前が根暗になる必要ねーんだよ」
「…」
「人間はつまらない生き物だから、自分より相手が幸せだったり、良い環境にいると妬むモンなんだよ。そういうヤツには好きに言わせとけばいい。お前が変わる必要なんてねぇ。…って瀬戸内寂聴が言ってた」
「…なんですか、それ」
瀬戸内寂聴の名前で何故か、あなたのなまえは少し落ち着いたようにも見えた。あのばーちゃん、スゲーな。
「私だってずっとこのままなのはダメだって分かってます。両親が私がこんな姿だから心配してる事だって知ってます」
あなたのなまえは服の裾を握りしめながら、俯き加減でそう言った。でも泣く事はない。あ、そっか、泣いたらマネージャー終わりって話したのは俺か。つーか、自分でも今のままじゃダメって気付いてんなら、話早くね?ヅラとの約束すぐ叶いそうじゃん。
「んなら話早ぇーじゃねーか。んなら…」
「ダメなんです!!!」
この期に及んで何?いきなりデカイ声だすモンだからちょっとビビったわ。
「何でよ?」
「昔みたいに…普通に戻ったら、また嫌がらせにあったりとか…そんな事を考えるだけで怖いんです」
「バカだな、お前。…じゃ、例えばお前が気に入った宝石があるとしてそれが1億したら買うか?」
「か、買いませんよ!!」
「どーして」
「どーしてって…そんなお金持っていませんから、買えません!」
「だろ?人間もそれと一緒なんだよ。高嶺の花過ぎると人は手を出せない。あなたのなまえもそうなればいい。俺だって、影で色々言われているのは知っている。だが、誰も俺に手を出して来ない。それは俺がその高嶺の花だからだ」
「…それも瀬戸内寂聴ですか?」
「いや、俺だ」
「…でしょうね。まったく心に響きませんでした」
「何で!?今、すっげー良い事言ったんですけど?」
そんな事を言うあなたのなまえは少し笑っているようにも見えた。
「でも、すいません。その…もう化粧の仕方も忘れてしまいましたし、昔みたいには戻れま…」
戻れません。なんて言わせねぇ。そうはさせるか!!ヅラとの約束が…俺の休みがかかってんだよっ!!
俺はあなたのなまえが言い終わる前に、奴の顎を持ち上げて言った。
「変えてやるよ、俺が。お前の見た目も中身も全部」
超カッコよくね?俺。でもあなたのなまえの顔、ドン引きしてた。何で?
しかし、あの時ちょっとだけはにかんだ笑顔を見せたあいつの顔にドキッとしたのは何かの間違いだと思いたい。
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