心を開ける鍵を俺は持っているか




俺は次の現場に向かう為に高速に乗った。


「つーか何で俺が運転してんだよ」


バックミラーで後部座席を見るとさっきと変わらない顔をしたあなたのなまえが居る。何と声をかけていいか分からなかった俺はそのまま現場入りした。出入り口で俺を待っていた、そこのスタッフが俺が運転している事に驚いていた。


「あ、こいつ俺のマネージャーね。急に体調が悪くなったみてーだから」


そう言うと皆納得した。もちろん、気分が悪い訳じゃないあなたのなまえは口数は少ないもののいつも通りの仕事をこなした。








気付けば23時を回っていた。今日はこれで終わりだ。

窓の外はクリスマスでもないのにイルミネーションの様だ。東京の夜はチカチカし過ぎてあまり好きじゃない。そっとカーテンを閉めた。

あれから「今日はすいませんでした。帰りは私が」と言ってあなたのなまえは車の鍵を手にした。

車内での会話は殆ど無い。それはいつもの事だったがなぜか今は空気が重たく感じる。











「お疲れ様でした。明日はお休みなのでゆっくり休んで下さい。明後日は7時にお迎えに上がります。では」


いつもと変わらずの挨拶だった。








「あー、なんつーかあれ、その、お前この後何か予定あんの?」


「いえ、特には」


「そうか…ならちょっとうち寄ってかね?」


そう言うとあなたのなまえの目が冷ややかな目線に変わった。人が心配してやってんのにこのクソ女!!


「勘違いしてんじゃねーよ!お前全然俺の好みじゃねーから心配すんな。何も起こんねーから」


そう言うと冷たい視線は無くなった。なにコイツ。


「…じゃあ少しだけ」




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