土方君に告白した。でもフラれた。
好きな人がいるのか聞いたら、「いない」と言っていた。今は部活の野球に専念したいから、って。
私って野球以下なの?告白中に明らかに暗い表情をした私に「ありがとうな、嬉しかったよ」って言って頭をポンポンしてくれた後に土方君は部活に行ってしまった。
そんな土方君とは実は同じクラスだったりする。
「はい!じゃあ隣の人とペアになって、一人がモデル。もう一人がそのモデルを描きあげて下さいね。その中で先生が良い‼と思った作品はコンクールに出展しまーす」
そういえば今は美術の時間だった。生徒から慕われる明るい女性の先生が今日の授業の内容を説明していた。あー、私画力無いからモデル側になろう。とか言ってモデルと言う程飛び抜けて綺麗なワケじゃない。でもモデルなら動かなければいいだけだから、私の視線の先にある土方君の方を見ていても怪しまれない。
「つー事で高杉、私モデルねー」
「つー事で≠ニかいきなり言われてもお前の考えなんて分かんねーよ」
隣の席、つまり私のペアになる高杉に顔を向けてそう言った。
「だって私、絵心無いもん。だから高杉が書いて」
「はいはい」
案外彼は私の言う事を素直に聞く。周りの女子はなかなか話しかけるところを見た事がない。多分見た目的に話しかけづらいのだろう。でも私はまったくそんな事は思わない。なぜなら土方君以外は芋にしか見えない。なので高杉も芋です。
「お前今スゲー失礼な事考えてたろ?」
「え?思ってないよ‼高杉が芋とか全然思ってない‼」
「思うどころか口に出てんじゃねーか」
んもう、そんな事はどーだっていいんだよ‼今はモデルを仮の姿とし、向こうで相手である山崎と笑いながら絵を描く土方君を舐める様に見るのが私の真の姿よ。変態と思われても構わぬ。
つーか、もうちょっと頑張れば土方君は私の事好きになってくれるのかな?それならダイエットだってもっと頑張るし、女子力だって上げるよ?
フラれても最後にされた頭ポンポンでヘコむどころか、更に胸キュンしちゃったよ。あーあ、無邪気に笑う土方君可愛すぎる。
「土方はやめとけ」
私を描いていた高杉の存在をすっかり忘れてた。
「え、なんで分かんの?」
高杉には一度たりとも土方君を好きだとか匂わせた事無いのに。
「てか、土方彼女いるし」
「うぅぅぅえぇ⁉」
予想もしていない事を喋り出す高杉に私は動揺して変な声を上げてしまった。
土方君を好きな事は仲のいい友達数人にしか話していない。みんな、口が堅い子だから口外するはずないし。
「ちょ、ちょっと待って⁉え、いや超聞きたい事あるんだけど、何で私が土方君を好きな事知ってんの?」
周りに気を使いながら、高杉にしか聞こえない声で問いかけた。
「お前を見てたら分かる」
「あ、そう。つーかそれより‼ひ、土方君彼女いるの?」
だってあの時彼女居ないって言ってたのに…さてはその後に出来たとか?
「あぁ。半年位付き合ってんじゃねーの?」
「なんでそこまで知ってるの?」と尋ねると、「いや、俺、土方と幼馴染だし。家、隣の隣だし」と言った。クソっとんでもない土方情報屋が高杉とは見抜けなかった。
「お前にショックを与えまいと、彼女居ないって嘘付いたんじゃねーの?」
「…土方くん、キュン‼」
なんて優しい土方君‼私がショックにならないようにそんな事を考えていてくれたんだね。もちろん、彼女が居るのはヘコんだけど、それでも好きー‼優しい土方君が好きー‼そんな視線を土方君へと送っていたら、
「いい加減こっち見ろよ」
と、高杉が私をあごを持ち上げて強制的に高杉の方を向かされた。
「な、な、な、何よっ‼そ、そんなあごクイなんてしても、た、た、高杉の事好きになんてならないんだからねっ」
「ばーか。勘違いしてんじゃねーよ。いつまでも他所を向かれたら絵が完成しねーだろが」
あ、そーゆー事ね。なんだなんだ。あーあ、今のが土方君だったら超嬉しかったのになー。それから私は真面目に高杉の方を見ていた。私を描く高杉の目は真剣だった。
「あ‼高杉君、ちょうど良いところに居た」
帰ろうとスニーカーに履き替えようとした時、後ろから美術の先生に声をかけられた。
「なんか用すっか?」
美術の授業以外特に接点がねーから、声をかけられた理由が分からねー。
先生を見ると「ジャーン‼」と、一枚の紙を見せられた。それには第10回全国高校生絵画コンクール≠ニ書かれていた。
「この前の授業で高杉君が描いた絵がすごく評価が良くてね、他の先生達もこの絵をこのコンクールに推薦してるのよ。もし高杉君が良ければだけど、これに出してもいいかな?」
先生は両手を合わせ、お願い≠フ仕草をしていた。
「こんな絵でいいんすか?だってモデルがアイツっすよ?」
いや、ホントこれで良いのか?って思った。だってマジ、モデルが奴だし。俺が笑いながら言ったら、
「むしろそれがいいの‼」
と、サラッとアイツに失礼な事を言っていて、俺は笑ってしまった。先生はきっと気付いていない。
「あのなんとも言えない切ない表情がとても素晴らしいと先生は思うの。…高杉君いい?」
俺は「あんなんで良ければどーぞ」と言って、帰った。
2ヶ月後。驚く事に俺の絵は金賞を取った。モデルになったアイツは「私がモデルだったから金賞取れたのよ。さすが私‼」とかふざけたことを言っていた。
そしてアイツはバカだから気付かないんだろう。その絵のタイトルが「届かない人」の意味を。お前から見た土方の事を言ってるんじゃない。
俺から見たお前の事を言っている事なんて。
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