それからしばらくすると「悪かったな。上がってくれ」と声がした。「お邪魔します」と改めて告げてゆっくりと応接間に足を踏み入れた。すると寝室からひょこっと坂田さんが顔だけ出して「変なモン見せて悪ぃ」と謝って来た。


「いえ、黙って入って来た私が悪いんです。坂田さんは悪くありません。それに、ここ坂田さんの家ですし…」


その言葉を聞いた坂田さんは安心したのかヘラッと笑い「いやー、昨日長谷川さんと飲み過ぎちゃってー」と頭をガシガシとかきながらいつもの定位置に座った。


「長谷部さん?」


「あー、まるでダメなおっさんの長谷部さん。昨日飲みに行ったんだけど朝、目が覚めたら玄関に俺寝ててさ。風呂に入って上がってきたところにお前が居た」


あ、たまにあったもんね。飲み過ぎて台所で寝てたとか、玄関先で寝てたとか。


「気ぃ抜いてた。俺の周り、暴力女とか、ストーカーの殺し屋とか、スモーカーとかしかいねぇから。今度から気をつけるわ」


坂田さんにストーカーいるんだ。そうだよね。だってかっこいいもん。胸を締めるつけるこれは間違いなく恋≠セ。


そんな気持ちで坂田さんを見つめるといつも飲んでるピンク色の何かを飲んでいた。それ毎日飲んでる様な気がする。そんなに美味しいのかな?その光景をただただ見ていると坂田さんが私の目線に気付いた。


「なに?もしかしていちご牛乳飲みてーの?」


「いちご牛乳?」


あれはいちご牛乳って名前だったのか。私が語尾を上げた事で坂田さんは「いちご牛乳知らねーの?あ、もしかして飲んだ事あるけど記憶失くしてるから忘れちまったとか?」と言い出した。絶対に飲んだ事は無いのだけれど、坂田さんが「飲めば何か思い出すかも知んねぇよ?」と笑顔でそのピンク色のパックを差し出して来た。


「な?」


キラキラした瞳で見るその目に私は抵抗など出来ず、それを受け取ると少しだけ中身を口に入れた。


「美味しい」


それは思っていたより甘くなかった。嬉しそうに坂田さんは「初めてだったか?」と聞かれた。


「多分初めてです。でも私好きです、こういうの」


「そっか、なら良かった。嫌いじゃなく
「何やってんですか、あんたら」」


坂田さんの言葉を遮る様に声がした。振り向くと少し青ざめた新八君が立っていた。


「あ、ぱっつあんお帰りー」片手をヒラッと挙げて坂田さんが声をかける。


「あ、ぱっつあんお帰りー≠カゃないでしょうが{emj_ip_0792}2人で何してんですかー{emj_ip_0792}大体彼女に変な野郎が付かないように見張ってろよ、とか言っておきながら、なにちゃっかり自分が手出してるんですか{emj_ip_0793}」


「…はい?」


何かきっと勘違いをしている新八君に坂田さんは私が家に上がってからの事を話した。


「早とちりしましたァァァァァ{emj_ip_0792}すいませんでしたァァァァァァ{emj_ip_0792}」


正座をして謝る新八君。


「あの…新八くん何も悪い事してないから。ね?」


新八君をなだめる私。坂田さんは両手を後頭部に組んで、「あー、チェリーボーイの想像力には勝てねぇわ」と言い出す。新八君はちょうど坂田さんが初めてだったか?≠ニ言った時から入り口に居たらしい。それを彼なりの想像で解釈したようだ。


「いやでもですよ、銀さん。さっきの話が本当なら銀さんとなまえちゃん、間接キスをしたって事ですよね?」


「…あ」






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