「なまえちゃん、跡形も無く処分してらっしゃい」


笑顔で私をお妙さんは送り出した。ここ数日、一緒に過ごしてきて少しお妙さんの性格が分かってきた。すごく綺麗な人なのにたまにふと黒い事を言う。嫌味などなく本当に信頼できる人だと私は思った。






家を出て万事屋の方向への歩き出す。もう町の人達は活動をしていて朝からシャキッとした気持ちになった。道にもだいぶ詳しくなり、前回みたいに迷う事は恐らくもう無いだろう。

右へ曲がる角を曲がった時だった。


「きゃっ{emj_ip_0792}」


丁度向かい側から曲がって来た人とぶつかってしまい、地面にお尻をついてしまう。


「あ、悪りぃ。大丈夫ですかぃ?」


「…あ、あなたはあの時の」


この黒い服と明るい茶色の髪の毛には見覚えがある。私が道に迷った時に、万事屋まで道案内してくれた真選組の人だ。


「この前はお世話になりました。えっと…確か真選組の方でしたよね」


「沖田。沖田総悟」


急に名乗られた事に「あ、あ。沖田さんですね」と馬鹿みたいな返事をしてしまった。すると「あんたは?」と返された。


「あ、すいません。私はなまえと申します。」


「なまえですかい?上の名は?何て言うんですかい?」


「え?上の名前ですか?」


「そう、名字」


「えっとごめんなさい。名前しかなくて…名字って言うのが分からなくて」


「分からない?あんた、天人なんですかぃ?」


そもそも名字と言うのは何だろう。坂田さんとか新八くんにはあって、神楽ちゃんには無い。それに天人って何の事だろうか。私が答えられずにおどおどしている姿を沖田さんは目を細めてみている。









「なまえはいじめちゃダメ。総一郎くん」


急に後ろから現れた声にびっくりして振り向くとまだ家に居るだろうと思っていた坂田さんがコンビニの袋を持って立っていた。


「総悟でさァ、旦那」



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