なぜかさっきからズキン、ズキンと心が痛む。はっきりと彼女じゃないって言われた。…何落ち込んでるんだろう。当たり前じゃない。私が人間≠ニして現れてからそんなに日が経ってないじゃない。違う。時間が短かろうが、長かろうが「違う」と言われた事に純粋に傷付いたんだ。










「なまえ?」


心は簡単に傷付く。


「おい、なまえ?怒ってる?」


「えっ!?あっ、ごめんなさい、何ですか?」


さっきから坂田さんが私を呼んでいた事に気付かなかった。


「もしかしてさっきのジジィが言った事怒ってんの?」


どうして私が怒る事になっているのだろう。そんな怖い顔してたかな。


「どうしてですか?私は別に何も…」


「さっきのジジィが言った事気にすんなよ。あれ、なんだ、俺みたいなオッサンを彼氏って思われたから怒ってんだろ?」


そう言って坂田さんは笑い始めた。そうか、私が黙っている理由を坂田さんは勘違いしているんだ。自分みたいな人が恋人と間違われたと思って。









「違います!!坂田さんは、す、す、素敵な人です!!それに坂田さんはオジサンじゃありません…から」


何を言っているんだ、私。慌てて両手で口を閉じたが、後の祭りだ。やってしまったと、俯くと、笑いを堪えている坂田さんの声が聞こえた。


「あ、あの」


「あー、腹痛ぇ…」


「す、すいません。お腹痛いのであれば私の事は気にしないでどうぞ、厠に」


「なに、なまえは天然キャラなの?別に銀さん腹壊してねーよ。これは笑い過ぎのせいです。大人しいなまえが急に大声で叫ぶもんだからびっくりしたわ」


笑い過ぎて坂田さんは少し涙が出ていた。人間は悲しくても泣くし、笑っても泣くモノなのか。人間とは難しい。


「坂田さん、そんなに泣かなくても…「なぁ、その坂田さんっての止めね?」」


私の言葉に被せる様に、坂田さんはそう言った。


「じゃあ、何と呼べば…馴れ馴れしかったですか?」


「いやいや逆よ、逆。俺は馴れ馴れしなってくれた方が嬉しいワケ」


「じゃ、坂田殿?」


「いや、どこの殿よ、俺もっさりブリーフ派じゃないからバツー」


「もっさりブリーフとは何ですか?」


「あ、ごめん。その言葉即忘れて」


「そうですか…では、坂田氏はどうでしょう?」


「いや、それもう何かに乗っかっちゃってるよね?ブームはすぐ終わるもんよ。だからダメ」


二つともダメだった。あまり呼び名として向いていないようだ。回りのみんなが何と坂田さんを呼んでいるか思い出す。


「あ、じゃあ、銀さんじゃダメですか?みんなそうやって坂田さんの事呼んでますよね!」


ちょっと不服そうな坂田さんの顔だったが、「まぁ、ヨシ!としましょうか」とOKが出た。その時の私の顔は笑ってた。


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