「銀ちゃん!銀ちゃん!コレがやりたいアル!」


「あ?金魚すくい?」


人間は私達をすくって遊ぶ事の何が面白いのだろう。ただ逃げる事しか出来ない私の体はこの狭い世界の壁にぶち当たりぼろぼろ。頭だけが黒くて、体は白い。綺麗に分かれているこの色彩のおかげで、面白半分で追い回される日々。もう逃げる気力も無くなった。人間に捕まった子たちがその後どうなったかは分からない。誰も知らないという事は生きて戻ってきた者はいないと言う事。


「新八、コレ今は小さいけど大きくなったら食べても平気アルか?」


「神楽ちゃん、これはね金魚≠ニ言って観賞用だよ」


「食べれないアルか…じゃやめとくネ」


「え?あんた、もしかして食べるつもりだったの?」


私達を見て涎を垂らしていた女の子は食べれないと分かると、がっかりした顔をした。…それにしてもさっきからこの銀髪の人は何だろう。ずっと私を見ている。


「なぁ、親父。こいつ体が傷だらけだけど」


そう言ってしゃがみこんだ。


「あぁ、こいつはな体の色が綺麗に二つに分かれてんだろ?だからみんな面白がって捕まえようとすんだけど、またこいつの逃げ足の速いこと。誰も捕まえられねーんだよ。でももうそろそろかも知んねーな、元気が無くなってきたみてーだ」


主人も私にもう逃げる気力が無い事に気付いているみたい。彼は私を指差しこう言った。


「金は払うからさ。こいつ、俺に譲ってくんない?」


その一言から物語は始まったんだ。




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