私がこの家にやって来て3日経った。あの銀髪の人は私一匹だけじゃ可哀想だと言って、仲間を3匹一緒に連れて帰った。前よりも小さくなったこの水の世界は私にとっては居心地が良かった。ガラス1枚を隔てて眺める世界は新鮮なものばかりだ。この家にはご飯をよく食べる女の子。メガネをかけた真面目な男の子。大きな犬。そして…


「おはよーさん」


毎日私達に餌を与えてくれる銀髪のあの人がいる。「お前の傷、治んねーのな」と言って私を見る。気にかけてくれているようだ。この家の住人は万事屋というものをしているらしい。何でも屋さんみたいな感じだろうか。町のみんなから慕われているのが良く分かる。彼の周りには沢山の人と笑顔が溢れていて毎日生き生きしている。

そして私はいつの間にか彼を目で追うようになっていた。


「あの人の事、好きなの?」


「え?」


同じ世界に生きる仲間が私にそう聞いてきた。


「毎日あなたに声かけてくれるよね、あの人」


「うん」


でも、私は所詮金魚。人間と恋をするなんて無理な話。言葉さえも届かない。このガラス1枚で出来た世界が急に憎らしく見えてくる。



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