壁に耳あり、障子に私








「そろそろ行かねぇと。今日新台入替なんだわ。あ、その野良猫案外近くにいるかもしんねぇよ?ね、土方くん?」


背中を向け、何か意味深な事を言った銀さん。振り返る事無く、ヒラヒラと手を振って、パチンコ屋のある道へと行ってしまった。


「今日みんなおかしいよ?どーしたの?」


沖田君はニヤニヤ、他の隊士達はハラハラ、土方さんは無。このみんなの表情の違いはなんだ?土方さんにいたっては少し顔色が悪く見える。


「あの…土方さん、大丈夫ですか?体調があまり良くないんじゃ…?」


「あいつに会ったからだ。…悪りぃ、先に屯所に戻る。後は頼んだ。なまえ、総悟」


覇気無くそう告げて土方さんは来た道を引き返して去って行った。体調不良なんて土方さんらしくない。大した事無いといいんだけど。


「一層の事、死んでくんねぇかな」


口角を上げ、ほくそ笑む沖田君がそんな事を言い出した。


「そんな事させないもん!つーか、沖田君が死ねば?」


「いやいや、なまえさんがどうぞ」


「遠慮しなさんな、沖田君死ね」


「お前が死ね」


「テメェが死ね」


「ペチャパイの妄想女は即死ね」


くぅー、こいつマジムカつく{emj_ip_0792}


「私は…生きる{emj_ip_0792}」


土方さんがいなくなったこのクソみたいなメンバーでは(自分で言うな)見廻りが遂行される訳も無く、他の隊士達の冷やかな目線を浴びながら沖田君との口喧嘩をしただけで終わってしまった。







夜、夕食に土方さんは現れなかった。みんなに聞いても知らないと言う。いつもご飯を作ってくれる食堂の女中のおばちゃんに聞いてみたところ、その答えをおばちゃんは知っていた。土方さんは夕食前に現れて、「気分が優れないから」と言う理由で自分の分は準備しなくていいと告げていったという。oh{emj_ip_0792}なんと言う事{emj_ip_0792}私とあろう者が土方さんの体調の変化に早く気づいてあげられなかっただなんて。是非、局中法度に加えて欲しい。「土方さんの変化に気付かぬ者は即、切腹」と。食事を終えた私はすぐに土方さんの部屋へと向かった。寝ているといけないと思い、そーっと足音を立てずに障子の前まで来ると、何やら小さく息使いが聞こえる。










「…くっ…はぁ…っ、」


ひっ、土方さん{emj_ip_0792}一体、障子の向こう側でナニをしていると言うのですか{emj_ip_0793}鼻血が出そうなセクシーな声に耳が「ごちそうさまです」と言い出した。胸がドクンドクンと緊張している中、土方さんに対していつも下心満載の私はそっと障子に手をかけた。



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