DAN DAN 心離れてく








「なまえさん、おはよーごぜィやす。今日は一段とブサイクですねィ」


朝から何故こんな事を言われないといけないんだ。しかし自分でも気付いていた。いつもより顔がむくんでいる事に。あの涙が原因だったのだろうか?それを沖田君に指摘された事に少しムッとした。いや、でも丁度いい。沖田君に聞きたい事があったんだ。



「ねぇ…気を悪くしたらごめん。沖田君のお姉さんってさ、どんな人だったの?」


沖田君は一瞬哀しそうな顔をしたがいつもの鬼畜な顔にすぐ戻った。


「…綺麗な人でしたぜ。なまえさんと違ってお淑やかで、口も悪くなくて、早起き出来る人で、ガサツじゃなくて、器量が良くて、寝相が悪くなくて…」


「あぁ、はいはい。もういいです。なんか私の全人格を否定されている気分になるので以上で結構です」


聞いたのが間違いだった。すっごく不快な気分になったわ。でも…良い人だったんだね。全く私と似ても似つかないんだろう。


「でも…、あんたも綺麗ですぜ。強くて凛々しくて…姉上とは違うタイプですがね」


沖田君…キュ…


「ま、下着がもっと清楚なタイプなら調教しがいがありますぜィ。特に白とか最高です」



キュンとしなくて良かった。こいつ、いつの間に私の下着をチェックしたのだろうか。絶対白は買わない。お前には負けない。私は何色にも染まらない黒しか買わないと心に決めた。


「あ、いたいたー{emj_ip_0792}もう何やってるんですかぁ。朝稽古始まってますよ。さぁさぁ」


私たちを探していたのだろうか。山崎が私と沖田君の背中を押しながら剣道場へと誘導する。…なんか今日は土方さんの顔見たくない。別に悪い事をした訳じゃないのに。罪悪感が私を襲ってくる。

促されるまま道場に足を踏み入れる。そこにはいつもと変わらず熱心に指導している土方さんがいた。良かった。顔色も普通だし、元気もあるみたい。私達の姿に土方さんが気付く。無視するのもなんだから一応挨拶だけしとくか。


「ひ。ひじかたさん。おはようございます」


「なんだよ、その棒読みは。…その…なんだ…昨日は世話になったな。本調子じゃねぇが熱は下がったみてぇだ。約束の件、今度な」


「え?あ、はい」


あれ?なんか普通じゃない?覚えてないの?あの人と私を間違えた事。あれって寝ぼけていただけなの?その後の土方さんもやっぱりいつも通りで、やはりあの件は無意識なものだったと思った。

なんか…私、土方さんの一番になれんのかな。もう亡くなっている人を今でも思っているのなら…今を生きてる私が一番になれる事なんてあるのかな。そんな事が頭の中をぐちゃぐちゃするもんだから、その日は格下相手との試合で負けてしまった。今までこんな事無かったのに。


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