そして、さようなら。







あと…3人。
殺りあって分かった事。
こいつらは戦闘に長けている天人だ。人間の動きじゃない。そして私を殺すのが目的じゃない。私を待っているってどういう事なの?斬られた右足の太ももが痛みだした。アドレナリンで感じていなかった色んな傷口からの痛みが今になって疼きだした。







なまえ






ここに居るはずの無い人の声が聞こえる。とうとう幻聴まで聞こえる様になってしまったか。こいつらが私を殺すつもりが無くても出血多量で逝ってしまうかもしれない。体力を温存して戦っても、こいつらの主人とやらに何かされるんだろう。だったら私はただ勝つだけ。








「なまえ !!」





ふと、私の名を呼ぶ土方さんの声がした。さっきのは聞き間違いなんかじゃない。遠く向こうから土方さんが走って向かってくる。




「土方さんっ{emj_ip_0792}」




ズキッ




「痛っ」



隙を見せた瞬間に点穴をつかれた。身体がみるみると鈍ってくるのが分かる。立つ事さえもままなず、私の両足は地面にひざまづいた。




「おい{emj_ip_0792}しっかりしろ{emj_ip_0792}」




自由が効かなくなり、手さえも言う事を効かない。視線だけを奴らに向けるとなにやら布に液体の様な物を染み込ませ、それを私の口と鼻を塞いだ。



「…{emj_ip_0793}」



その臭いを嗅いだ瞬間、一気に意識がぐらつく。軽く目眩がした。平行感覚を奪われる様にどっちが上か下か。どっちが右か左か分からぬ程に景色が回転する。ただ分かるのは冷たいコンクリートに倒れてしまった事だけ。痛く硬い感覚がそう教えてくれる。



「なまえ {emj_ip_0792}」




何度も私の名を叫ぶ土方さんの声が徐々に聞こえなくなってきた。力も出なくなり手から刀が離れる。少しずつ目が霞む。きっとこのまま五感、全ての感覚を失って行くのだろう。

あぁ、土方さん。口の動きで分かるよ。

無音の世界となった私の瞳に最後に映るのは必死に私の名前を口にする土方さんだった。






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