忘れたことさえ忘れて







「ったく、仕方ないですねィ。土方さんが明日フルチンで屯所を走り回るって言う条件で話してやります」


「ねぇ、何なの?お前マジで何なの?俺、何かした?」


そんな事を言う土方さんを横目に沖田君は私に何が起こったのかを話しだした。


「なまえさんはあの日…俺と婚姻届を出しに行く途中だったんでさぁ」


「えっ!!私と沖田君が?」


「やっぱり覚えてない…か。今のあんたは覚えていないかも知れねーですけど、そのお腹の中には居るんでさぁ」


「も、もしかして沖田君と私の…?」


「男の子だったら天空≠ニ書いてラピュタ=B女の子だったら紅≠ニ書いてブタ≠ノしようって…」


「おい、総悟。もういいから真面目に話せ」


「へーい」


…。嘘だったのか。流石に私も紅≠ゥらの下りでなんとなく、そう思ったけどやっぱりそうだったか。

それから沖田君は本当にあの日起こった事を話し始めた。


あの日、私は手に入れたある薬を試すために沖田君と共に行動していたらしい。というのもその薬は惚れ薬らしく、効果を確認する為に実験台として沖田君を選んだのらしいのだが、なんやかんやでその薬が私自身に効いたというものだった。


「で、その薬は最初に見た相手を好きになるって事だが、なまえちゃんの行動をみる限り屯所の人間ではないようだが、総悟、相手は一体誰なんだ?」


「…それが万事屋の旦那なんでさぁ」


「!?な、万事屋だと!?そ、それは間違いないのか?」


「近藤さん、お言葉ですが私、銀さんの事が好きなんです。その薬のせいなんかじゃないですよ?」


「ほらね。運が良いのか悪いのか間違いなく相手は旦那だ。ただやっかいなのが例のたんこぶですぜ。普通はその薬で最初に見た相手を好きになる、つー症状だけですが、今のなまえさんはそれだけじゃない。見て分かる通り、人が変わったかの様に真面目&可憐さ&優しさ&誠実さ&ドMさがプラスされている。どうやらこれはなまえさんが転んだ時に丁度良いところに落ちていた石に頭をぶつけた結果がこれと来たもんだ」


…そっか。それが真実だったのか。沖田君の話しぶりからすると薬を使う前の私超おクソじゃない?(真面目になったので超クソ≠ニいう汚い言葉がちょっと丁寧になった)でも、そんな薬を使わなくても正直私の気持ちは銀さんのモノなの。


「で、お前は何でなまえがそんな事をしようとした事を止めなかった。総悟、お前なら最初から気付いてたはずだろ」


土方さんがムスッとした表情で沖田君に問い詰める。すると沖田君の口から舌がちょろっと飛び出し、


「だって面白そうだったんだも〜ん」


と言った。それにちょっと呆れた顔をした近藤さんだったが「まぁ、相手が万事屋ってのが引っかかるが今のなまえちゃんの勤務態度は真面目で問題無い。どうだろうこのまま様子を見るって言うのは?」と考えを述べたが、それに待った!≠出したのが土方さんだった。


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