ゆれて魔性のリズム







「…ん」


チュンチュンと鳴く雀の声で目が覚めた。スマホの時計を見ると、まだみんなが起きる起床時間より1時間も早く目が覚めていた。


「なんか夢を見ていたような…んー、思い出せん」


医者に診てもらってから数日。毎日の様に何かの夢を見ている気がする。なんか、白と黒だけの色の夢。しかし朝になるとさっぱり思い出せない。思い出せないのはきっと大した夢じゃないという事なんだろう。


「稽古でもするか」


時間を持て余した私は身支度を整え、竹刀を持って道場へと向かった。道場に近づくにつれて、シュッ、シュッと風を切る音が強くなってきた。


「(誰か居る…)」


そっと隙間から中を覗くと一心不乱に竹刀を振る土方さんの姿があった。


「(うげ。土方さんだ)」


未だにこの前の話が本当だと信じれない自分がいる。私が土方さんを好きだったなんて。長居は不要と思い、自室の方向に向いた時、


「入ってくりゃいいだろ?黙って見てねぇで」


足を踏み出そうとした瞬間。土方さんから声をかけられた。


「気付いてたんですか?」


「思いっきりな。竹刀めっちゃ出てたぞ」


自分の体は陰に隠してても、竹刀の存在をすっかり忘れてた。自分隠して竹刀隠さず≠セ。


「相変わらずだな。つーか、お前本当に…いや、いい。やりに来たんだろ?俺はもう行くから」


そう告げて、私の目を見る事なく、横を通り過ぎていった。私は遠くなっていく土方さんの後ろ姿に何も返す言葉が出て来なかった。


「何なんだ、この気持ちは。なんか、心臓がかゆい!!!…えぇぇい!!!邪念め!銀さん!銀さん!私には銀さん!土方さんなんて、犬のウン◯踏んでしまえ!!」





















「トゥナイヤヤヤヤヤイヤディア!!トゥナイヤヤヤヤヤイヤーディア!!!」


「山崎、なまえちゃんのあの掛け声は一体何なんだ?」


「あ、局長。おはようございます。なまえちゃんは今、自分の中にある邪念を追い払っているそうです」


「そ、そーなんだ。して、何故に仮面舞踏会?」


「分かりません。少年隊が邪念を追い払ってくれるって言ってました」


「ほぅ。なぁ、山崎。ヤ≠チて言葉をずっと見てるとセ≠チて言葉に見えてこないか?」


「え?ま、まぁ」


「…いかん!!考えれば考えるほどセ≠ノしか見えん!!くそぅ、邪念がっ!!なまえちゃーん、俺も一緒にトゥナイヤイヤイヤイヤヤディアさせてくれぇ!!!東山のポジションで!!せめて今だけはイケメンのポジションで!頼むっ!!!」


「いや、それ邪念でも何でもないから。…やってらんねー。朝飯食いに行こうっと」










気付けば、途中からずっと稽古場に居た山崎の姿は消えていて。代わりに隣でマイクスタンドを一心不乱に振り回す近藤さんの姿があった。

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