こんな事にはならなかったのに。
「いや、無い無い無い。絶対無い!!土方さんにおんぶされるくらいなら、自力で歩きます!!」
「うるせぇ!!」
「!?」
急に怒鳴った土方さんに迂闊にもびびってしまった。
「そんな足で何が出来んだ!!何があった時に足手まといにしかなんねーだろうが!!俺の事が嫌でも言う通りにしろ!!」
「…」
明らかに私は今、口がへの字になっているはずだ。しかし、土方さんの言う通りだ。今、喧嘩や奇襲をかけられたらこんな足の私は、思い通りになんて動けないだろう。何も言い返せない私は無言のまま、そっと土方さんの背中にしがみついた。
「山崎、とりあえず俺はこいつを屯所に連れて行く。俺は後で合流するから先に行っててくれ」
「わ、分かりました」
私はそのままおんぶをされて、屯所に帰る事になった。その間、土方さんは一言も話す事は無く、私も無言を貫いた。
「(…なんだろう。この感じ、懐かしいような、前にもこんな事があった様な…)」
急にフッと思い出させそうな何かが頭をよぎった瞬間、
「痛っ!!」
「どうした!?おい!!」
バットで殴られる様な強い頭痛が私を襲ってきた。
「おい、しっかりしろ!!」
「頭が…痛い」
その後の事は覚えていない。気を失っていたのか、目を覚ました時には医務室で寝かされていた。
「あ、起きた!?ちょっと待っててね、局長達を呼んでくるから!!」
慌てる様な山崎の声がした。しばらくすると、医務室に近藤さんやら、土方さんやら、沖田君やら入ってきた。
医者がペンライトで私の眼球を照らす。「もう意識ははっきりしている様ですよ」と、その場にいる者達に説明をしていた。「彼女の急な頭痛の原因はなんでしょう?」と近藤さんが心配そうに問う。
「恐らく何かが鍵となって彼女の記憶を閉ざしているんでしょう。それを今日、過去の経験と似た様な事があって頭が思い出そうと…それで頭痛がおきたのかもしれません。あと、彼女の性格が180度変わってしまっているのにも何か訳があるのかもしれませんね。例えば、今の様なお淑やかな性格になったのも、噂で聞く愛染香の症状にはないものです。彼女がどこかで、お淑やかな性格になれば何か変わるかも…なんて事を思っていた結果がこの現在の状況を生んでしまったのではないでしょうか。…そして土方さんだけに態度が違うのはもしかすると土方さんがきっかけなのかもしれません」
明日まで安静にしていなさい。との指示で、今日はこのまま休む事となった。みんなは隊務に戻り、私は1人あの医者が言っていた事をずっと思い返していた。
…何を言ってるんだ、あのお医者さんは。
私は元々この性格だよね。そう、元々…だよ。そう、きっと…
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