歌舞伎町の女王
隊務を終えた私が近藤さんに連れて来られたのは、ネオン輝くスナックすまいるだった。私達の姿を見つけたお妙さんが笑顔で寄ってくる。
「近藤さん、なまえちゃん。お待ちしてました」
近藤さんがストーカーに走るのも分かるわ。だってお妙さん美人だもん。いや、美人だからってストーカーするのは犯罪だけど。お妙さんの顔を見るなり鼻の下が伸び出した近藤さんが、「お妙さーん‼約束の件は⁉」と言い出した。約束って何だろう?
「近藤さん、ちょっと」
手招きして、私から少し離れた所にいる二人の声が微かに聞こえる。
「今回はなまえちゃんを貸して頂いてありがとうございます。約束の件、すまいるのスタッフ全員分×3のバーゲンダッシュお願いしますね」
「はい、お妙さん‼全員分のバーゲンダッシュを買ってくればいいですね‼この近藤勲、承知しました‼」
…あれ?近藤さん、気付いてる?私をここに出勤させた事に対して、近藤さん何も得して無いよ?それ、財布からお金飛んでいく話になってるよ?需要と供給って言葉知ってるかな?それじゃ、ずっと供給しかしてないよ。それでも、スムーズに進む約束の話に私は近藤さんを哀れんだ。こんな言葉を今の近藤さんに捧げよう。南無、と。
「じゃ、なまえちゃん、後はよろしくねっ‼」
ルンルン気分で帰って行った彼に私は何も声をかけれなかった。「なまえちゃん」と呼ばれ振り返ると、お妙さんが私の足元からてっぺんまで品定めをし始めた。
「あ、すいません。こんな格好で来てしまって」
隊務後とはいえ隊服のまま来てしまった事に今気づいた。ポニーテールにショートパンツとニーハイソックス、そんな格好じゃ客も引くよね。
「いいのよ、こんな事もあろうかとちゃんと準備は出来てるの。みんなっ‼」
お妙さんがパチンと指を弾くと、何処からともなく他のキャバ嬢達が現れた。
「みんなお願いね。なまえちゃんを目一杯可愛くしてあげて」
そう言うと、結構ブサイクなキャバ嬢達が私を控え室に誘導した。
ねぇ?大丈夫?この人達、超ブサイクなんですけど⁉自分の事も綺麗に仕上げられない人が他人の私を可愛く出来んの⁉すげー心配なんですけど。
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