ワタシS.O.S








「初めましてーなまえでーす{emj_ip_0792}おじさま、よろしくねっ」


愛想を振りまく事は昔から得意だった。真選組に入る前はずっと接客業の仕事しかしてこなかったけど、あの時の能力が今ここで役に立とうとは。そしてみんなが私を「可愛い」と褒めてくれる。真選組の野郎共は女中さん以外の女は私しか居ないのに全然褒めてくれないもん。ここに来るお客さんは社交辞令かもしれないけどやっぱり褒めてくれるのは嬉しい。天職ここかもしんない。


「なまえちゃんは、普段はどんな事してるのかな?」


普段?


「えーと、普段はー、悪い奴らぶった切ってまーす」


「え?ぶった切る…?」


お客さんの目がキョトンとした。あり?


「あらー、ごめんなさいね。なまえちゃん何を言っているのかしら。この子あれよ、ほら、ぶたを切ってるの{emj_ip_0792}実家が精肉店なのよ」


「ねー」とお妙さんが同意を目で求めて来た。おっといけない。そーゆー事か。


「そ、そうでーす。精肉店でーす」気を抜くと真選組の私に戻ってしまう。しっかりしなくては。








「?」


さっきから感じる視線。ふと、目線を感じたその先を辿ると団体客の一人が私を見ていた。このまま無愛想に目を外らすのも悪い気がしたので、笑顔で会釈をすると向こうも同じ様に返してきた。










客が少しずつ帰り始めた頃、私にも異変が現れた。







「うぃー気持ち悪りぃー」


普段はあまり飲まないお酒をたくさん飲んだからか、頭がぐるぐるし始めた。こりゃヤバイかも。その様子を見たお妙さんが「そろそろ上がってもいいわよ、なまえちゃんは今日素晴らしい働きをしてくれたもの」と帰宅を許可してくれた。ひとまずは外の空気を吸おう。それが先だ。ふらふらしながら店の外へと向かう。電信柱に手を付き、しゃがんでいると、先ほどどこかで聞いた声が聞こえて来た。


「君、大丈夫?」


振り向くと…これ誰だっけ?あ、思い出した。私を見ていた団体客Aだ。しゃがむ私の横に並んで肩に手を添える。


「飲み過ぎてるんでしょ?僕に送らせてくれないかな?」


いや、いいっす。帰る所、屯所なんで。


「あ、大丈夫です。タクシーで帰りますから」


「そんな体じゃ無理だよ。ね?さ、行こう」


コイツ、空気読めねー{emj_ip_0792}掴まれた腕を返そうとするが、力が出ない。くそぅ、いつもだったらこんな奴片手でダウンさせられるのに、情けない。


「痛っ」


無理矢理引っ張られた腕が痛い。酒のせいとは言え、無力な自分に腹がたつ。







「そんな奴もやれねーなんて、ザマァねぇな」


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