こころやまい▽2017/01/26(Thu)
無題
朔、また釦が外れているよ。聞きたくもないのに聞こえてくる声に、深々と溜め息を吐きそうになった。苦し紛れに吹かす煙草の味なんて、最早感じられない。
(……一体いつから)
僕の釦はもう、とめてくれないのかい? そう気軽に問えたら、どんなに、いいことだろうか。生憎、僕には駄々をこねる権利も、冗談を突く口も持ち合わせてはいない。
(ずるい、なあ)
ずるい、ずるい、狡い。ずるい男。小賢しい、男。
ちらり、と萩原くんの目が僕を見た。
(そんな顔もするんだね)
あまり悠々としていられないかもしれない。
▽2017/01/25(Wed)
共依存への在り処
やれやれと言った様子で彼の手を引いたのは、ナカハラその人である。待ち望んでいた瞬間。儚げな瞳は地に伏せられていて、視線が合わさることはない。
「……自分は」
控えめに開かれた薄い唇に目線を移す。想像していたよりもずっと低い声色に、驚愕の色を隠せなかった。
「萩原」
朔太郎、と名乗られるよりも先に、体が動いていた。勢いよく飛びついて、彼の背に手を回す。ナカハラが狼狽えた様子で僕の名を呼ぶが、この感動を抑える術を僕は知らなかったのだ。
ずっと会いたかった。君が覚悟を決める瞬間を待っていた。ずっと。心中で幾度も気持ちを吐き戻す。
「会いたかった、ずっとずっと待っていたんだよ」
彼の両手は、きっと行き場をなくしたまま空中で漂っているに違いない。初対面の人間に抱きつかれたのだ、不快な思いをしているに決まっている。だのに、僕は自分勝手で自己中心的だから、彼を離してやれないのだ。
あと少しだけ、このままで。
ぎゅっ、と彼を抱く腕に力が入る。不思議なことに、彼からは真新しい月の匂いがした。
「孤独になんてさせないよ。僕がずっとそばにいたげるからね。貴方のことが知りたくて知りたくて、ずっと待っていたんだよ、……ずっと」
ずっと、と言い終えると同時に、彼の手が僕の背に触れた。
「ようこそおいでくださいました、萩原朔太郎様。僕と一緒に、どうか、文学を守ってください」
遠慮がちに抱きしめられている。やんわりと縮められた距離感は、歪で不格好だ。耳元にかかる吐息がくすぐったくて、腰が動いてしまう。
「よろしくね、司書さん」
これが全ての始まりとは知らずに。
▽2017/01/02(Mon)
新年明けまして
「あけましておめでとうございます先生」
芥川先生「ふふ、あけましておめでとうございます」
「こんな司書ですが今年もよろしくお願い致します」
芥川先生「こちらこそ今後ともよろしくお願い致します」
「……」
芥川先生「……えいっ(おててぎゅっ)」
「ピャッ!?……え、あの、え、先生、手、手が」
芥川先生「……僕もね」
「え」
芥川先生「我慢するのには限りがあるんだ」
「え」
芥川先生「そろそろ手を繋いだって、いいと思わないかい?だってほら、もう一ヶ月だよ」
「え」
芥川先生「顔が真っ赤だね」
「だ、れの……せい……ぁぁ……」
「っ……ぼく、あー……僕は……」
芥川先生「うん」
「人とこんなに接触するの、初めてなんですよ……」
芥川先生「うん」
「えっと、だから、…………」
芥川先生「うん(おててすりすり)」
「ああああそれやめなさい!(ばっ)」
芥川先生「ごめんね」
「絶対思ってないぃ!……その、ですから、だから……」
芥川先生「うん」
「……お手柔らかに……」
芥川先生「時間は有限だよ?」
「有限ですけども!お手柔らかに!」
芥川先生「……努力はしようかな」
「絶対思ってないぃ!」
▽2016/12/26(Mon)
天邪鬼
「僕はイベント事は嫌いなんだ」
中原「へえ」
「他の図書館はどうだか知らないけど、うちにクリスマスなんて来なかっただろ? つまりはそういうことなのさ」
中原「……あのケーキの山は」
「悪魔が置いてった」
中原「俺らの枕元にあったプレゼントらしきものは」
「それも悪魔じゃないかな僕は知らない」
中原「…………お前よぉ」
「なんだよ」
中原「素直になれよ」
「だから悪魔が置いてったんだって」
中原「へーへーそうですか」
▽2016/12/26(Mon)
確率は2分の1
江戸川「半か丁か」
「丁!丁だって!」
菊池「なら俺は半でいいぜ」
江戸川「正解は……おや、半ですね」
「んんんおおおおお……」
江戸川「司書さんはこれにて三連敗、と」
菊池「悪いなぁ」
「きくっちー強すぎでは……」
菊池「海月の運がなさすぎるだけじゃないか?」
「そういう心にくるようなことはやめよう」
江戸川「……さて、続けますか?」
「今日はきくっちーの誕生日だから朝まで遊んでやんよー!」
菊池「おいおい、遊んでやっているのは俺の方だぜ?」
江戸川「なら私もつき合いましょう」
「賭け事だー!」
館長「ほどほどにな」
ネコ「まったくだ」
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