昨日2 今日3 合計2960 更新2018/12/25/16/00

投稿2018/12/25/16/00

【連鎖怪談 其の一】〜棚の中に巣くう者〜


これは、ある古い日本旅館のリニューアルを手掛けた時の話しです。詳しくは知りませんが前のオーナーは先祖代々続いた由緒ある旅館を、なぜか手放したとの事らしいです。

工事の前に間取りを把握するため、まずは全部の部屋を見てまわった時、押し入れの横に腰ほどの高さのある棚が、3台設置してある部屋がありました。

押し入れに一番遠い棚から順番に開けてみると、コンビニボックスと真ん中は冷蔵庫が入っていて、この2つの棚の上には緑茶器セットが置いてありました。
何にも変わった所はありません。

ところが、押し入れに一番近い棚の扉を開けると、何にも入っていないし、その上にも何も置いていません。

「何でこの棚は何にも使われてないんだろう?布団を敷く時に押し入れから近くて一番使い勝手も良いのに…」

一瞬、不思議には思いましたが、どの部屋よりも割とその部屋は綺麗に保たれていたので、畳みを張替えるくらいで、ほとんど手を付けずに再オープンしました。

数カ月後、しばらくして、その部屋に泊まる宿泊客から
「物が無くなる」
という苦情がフロントに入るようになりました。

それで、よく探してみると必ずその棚の中にあるのです。
つまりその棚には住んでいるのです。
霊が…

棚が押し入れと横並びになっているので、寝てしまうと棚が見えなくなってしまい、それで宿泊客もなかなか気付かないのです。

また、別の宿泊客がたまたま上下反対に、足の方を頭にして寝てしまった時、見てしまいました。

棚の扉の隙間から、青白い華奢な手がスーっと出てきて、上に置いてあった携帯を掴んで中に引きずり込んでいくのを。

そしたら次に、今度は手だけではなく、ヌっと上半身まで出てきて、携帯の隣にあった宿泊客のカバンの中を、首を小刻みに揺らしながら、ゆっくり左右に首を振り、ジッとカバンの中を覗き込んでいました。

その姿はまるで、時代劇に出てくるような鮮やかな赤い着物を身にまとい、髪は真っ黒い日本結いの、顔は白粉で白く浮かび上がって、まるで”おいらん”のようでした。

もはや目撃情報まで出て、そうなってしまうと、もうそこは開かないようにした方がいいんじゃないか、という話しになり、その棚の扉を開かないように細工をしたら、その後、別の宿泊客から今度は
「うるさくてしょうがないんだけど…」
という苦情が入るようになってしまいました。

中から”…トントン…”トントン…!…ドンドンドンドン…”…ガタガタガタガタッ…”

だから、しょうがなくまた扉を開くようにして、
[開けたら完全に閉めてください]
という注意書きを貼って、さらに天板の裏にお札を張って、この問題は放置、様子見という事になりました。
それでも、まだ目撃情報は後を起ちません…


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