第29話
後でちょっと良いかな?の言葉通り、ハリーは時間と場所を指定してレンを呼び出し、レンはそれに間に合う様にと、少し早めに夕食を切り上げては、とある場所へと向かう。
なんの話かは判らないが、先程の授業の後、どこかハリーは元気がなさそうだった。そんな彼を少しでも元気付けられたら…と、ちょっとした事を思いつき、その準備にとりかかるには一分一秒でも時間が惜しかった。
時間がギリギリになってしまい、息を切らしては待ち合わせ場所の空き教室に行くと、先に待っていたハリーは何処か驚いた様な表情をした後、レンの姿に小さく微笑んでは「走ってきたの?」と一言。
「少し、用足しをしていたら、ギリギリになってしまって…遅れてごめんなさい。」
息を整えながら言えば「来てもらえないかと思った。」と冗談っぽくいうハリーに再度謝ってはハリーの立っていた窓際に近寄ると、ハリーは「冗談だよ。」と小さく笑ったっきり、言葉を飲み込んでしまったかの様に何も話さなくなってしまう。
少し重い沈黙だった。
レンはそれに耐えきれずコトンと、小さな音を立ててハリーの前の机に小箱を置くと、ハリーは驚いた様な表情でレンに視線を向けた。
「これを作っていたの。時間が足りなくて屋敷しもべ達に少し手伝ってもらっちゃったのだけれど…。」
ハリーはそれに不思議そうに「僕に?」と訊ねれば、レンは大きく頷くが、ハリーはその小箱を驚いた表情のまま見つめて固まったかの様に動かなくなってしまい、レンはその箱を彼の手の上にそれを乗せると、ハリーはゆっくりとその箱を開ける。
中にはチョコレートトリュフにクッキーの羽がついたデフォルメ化されたスニッチ型の小さなお菓子だった。
チョコレート部分にスニッチの模様を刻むなんて時間はなく、本当に簡素化された物で「手抜きみたいな見た目で、人にあげるのは少し恥ずかしいのだけれど。」とレンの一言漏らしたが、その瞬間、レンの視界は真っ暗になってしまう。
暖かくて、何処か逞しい…。
そう、ハリーがレンを抱きしめていたのだ。
「ハリー?」
「なんでキミは…そんなに優しいの?」
「優しいつもりはないわ。ただ…ハリーが元気なさそうに見えたから。疲れてる時は甘いもの、かなって思ったの。」
「…十分優しいよ。僕はレンを傷付けたばかりなのに…こんなにしてもらって良い資格なんて僕にはないのに…」
「なんの話?」
「この前…ホグズミード休暇の時の事。…本当にごめん。僕、ずっと謝りたかった。」
「うん?」
「レンを誘ってたのに、ジニーの事も誘っちゃって。あの時貰ったのはダンブルドアからの手紙で、それまで気分が落ちてたんだけど、それでテンションが上がっちゃって、気が付いたら…って何度も頭の中で言葉を考えてたんだけれど言い訳っぽくて…上手く伝えられないんだけど…本当ごめん。」
「あぁ…あれは私が謝るべきだわ。」
その反応は予想外だったのかハリーの腕の力が緩み、ハリーの視線を感じるが、レンはその胸に顔を埋めたまま、顔を上げずに甘える様に抱きしめてみれば、ハリーが小さく笑った様な気がした。