神隠しとか、転生とか。 そう言った類は信じてなかったんですけど。 気づいたら見知らぬ場所で赤子に戻っていたなんて、当人の他に誰が信じてくれるんでしょう。 わたし、だけですかね。 降立ち どうやら自分が生まれ変わった場所には、現代人とは遠くかけ離れた人たちがいるらしい。 覚醒当時、私は0才乳児だっため、簡単に出歩いたりすることはできなかったけれど。 コロコロと床を寝転がっていたとき、ふと見えた窓の外になにやらひゅんひゅんと通り過ぎる人影を見つけたんです。 それはそれは驚いた。 だってものすごいスピードで空中を飛んでいたんですもん。 それと、自分には親というか、育ててくれる家族すらいないようで。 気づいた時には、今いるこの一軒家にポツンとひとり転がっていた状態だった。 始めはどうしようかと困り果てたけれど、何日かコロコロと転がっていれば、赤子の欲求は持ち合わせた理性で何とか抑えられるということに気がついた。 まぁ、ご都合主義かとも思ったけど、排便などは気づけば自然処理されていたので、なんとか社会的品性は捨てずに済みました。 そうして一ヶ月ほどコロコロと寝て過ごしていれば、なぜか言うことが利くようになってきた身体。 いや…一ヶ月で脳の指令が局部まで行き届くのは早くないかな、と思ったけれど、寝たきり生活よりは全然ましだった。 だから私は早速立ち上がって…え?立ち上がって? ぽてぽて歩き出しました。 「(ほんとに歩けるとは思わなかった…)」 ……、 びっくりですよね。 まあ、動けるならいいかな。 私はようやく動けるようになった身体でゆっくりと周囲を見渡すと、一ヶ月間寝て過ごした家の中を初めてこの目に収めた。 「(…本屋?図書館?)」 周りを見渡せば、そこには本、本、本、本、本、本…本の山。 それも随分と古いモノばかり。 驚きもそのままに、ひとつ手に取ってみればそこには見たことのない文字の羅列。 …おお。 でも、読めないことには面白くない。 と、いうことで。 私はそれ以来、必死に本の虫と化しました。 いや「他に気にするところあるだろ」なんて思わなくもなかったんですけど。 歩き出せるとはいっても乳児の身体でできることなんて限られていたので…。 本を読む以外にすることなんてなかったんですよね。 そうして、本に齧りつくこと更にもう一ヶ月。 本当にご都合主義かと思えるほどの速さで書物に綴られていた文字を習得しました。 ちなみに本を読み耽っていて学んだことがある。 この世界には所謂「忍者」というものがいた?いる?様子。 文字を習得してから内容理解に努めたけれど、どうやら書物・巻物に書かれている内容は術式とやらばかり。 正直ハテナばかりが頭を占めたけど、他にすることもないので取り敢えず読み続けることにしました。 そんな生活が続く中、一応外に出ることも考えた。 けれど、如何せん0才児がひとりで外を出歩いていたら普通オカシイと思って止めておいた。 なので、0才にして本に耽る生活がこの後数年にわたって続きました。 このあとに巡る出会いなんてものを全く予期できず。 わたしは、ただただぼんやりとして日々を過ごしました。 (あれ、何か背後にいる) (……どこかでみたことあるような…?)