幼馴染のよしみで出久にお願いしたら拍子抜けするほどあっさりと了承の返事が返ってくる。
「もちろん。晩御飯の後でいいの?」
「うん」
ごめんね、ありがと。の気持ちを込めて鼻先で両手を合わせれば出久は困ったようにやめてよ、と笑う。
「大事な幼馴染のお願いだからね」
少し痛む胸の奥の柔い場所。
それでも私は笑ってよろしく、と返す。
距離感を、見誤らないように。
寮の前で待ち合わせて軽いランニングから。
小さいときは私の方が早かったのに、
「男の子ってずるい」
すぐに大きくなって手の届かないところへ行ってしまう。
前を走る出久に小声で恨み言。
「僕からしたら女の子だってずるいけど?」
すぐに知らない表情をするようになっちゃう、なんてこっちを振り返ってへらりと笑う出久の顔はなるほど確かに子どもの頃から変わらない。
そんなものなのかもしれない。
でも、その顔が、どうしても私をかき乱す。
「ねぇ、ちょっと止まって」
どうしたの?どこか痛い?って心配して寄ってくる出久を、その純粋な優しさを私は裏切る。
「どうもしないよ」
言うと同時にぐいっと距離を詰めて、出久を閉じ込めるべく右手を喉元へ、左手を腰に回した。
「うわ、うるはちゃん!?」
「ごめんね、も少しこのままでいさせて」
知らない間に逞しくなった。
知らない間に傷が増えた。
知らない出久が、少し悲しい。
喉元から指を走らせて肩へ、脇腹へ。
そっとなぞっていくといつの間にか背中に回された腕にぎゅうっと抱きしめられた。
汗の混じる柔らかな出久の香り。
「ねえ、僕もオトコノコなんだよ」
そういうことされると勘違いすると言うか、ね?
いつの間にか開いた身長差故に少し上から聞こえる熱を孕んだ声。
「しても、いいよ」
しても、いいんだよ。
好きなんだもの、好きだったんだもの。
ずっと、ずっと。
だから、自主練とかもうどうだっていいから知らない出久をもっと教えて。